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松井裕樹は守護神を再び奪い取る。
心に秘めた「今年、見てろよ!」。
 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2019/02/11 11:00

松井裕樹は守護神を再び奪い取る。心に秘めた「今年、見てろよ!」。<Number Web> photograph by Genki Taguchi

久米島での春季キャンプ、第1クールからブルペンで投げ込んだ松井祐樹。今季に懸ける意思を感じさせる。

久々の先発が1つのヒントに。

「今年もZOZOマリンで開幕するんで、必ずリベンジしたい」

 これも松井が繰り返し述べていることだ。思えばこの試合での痛恨から歯車が狂った。30セーブが当たり前だった男は昨季、5勝8敗、5セーブ。防御率3.65と近年で最も低調なパフォーマンスに終わった。自身への憤りも、守護神への意欲を掻き立てる。

 とはいえ、何も収穫がない1年だったかと言えば、そうではない。

 ヒントはシーズン終盤に上がった、2試合の先発マウンドにある。

 新人だった'14年以来となる9月27日のロッテ戦で5回無失点、7奪三振で勝利投手となった。10月4日の日本ハム戦でも、敗戦投手にこそなったものの7者連続を含む6回14奪三振と持ち味を発揮した。

「あの2試合は、力を入れなくても140km中盤の真っすぐを投げられたんですね。フォームの感覚もすごくよかったんで、この状態を今年('19年)まで持続させたかった」

オフに取り組んだフォーム改善。

 松井が手応えを抱いた感覚。それを技術的な要素に落とし込み、今年へ向けフォーム改善のサポートをしたのが、彼の自主トレにも同行するトレーニングコーチの星洋介だ。 

 ポイントは右足。ボールをリリースするのと同時に、踏み出す右足をしっかり伸ばす。スムーズな体重移動でその再現性を高めることによって、松井が好感触を抱く、リラックスした状態で勢いのあるボールが投げられるというのだ。

 シーズンオフの12月にその提案をした星が、意図を解説する。

「去年の松井は、リリースと右足の使い方のバランスがよくなかったので右肩の開きが早かった。だから、ボールに十分な力が伝わりませんでしたし、コントロールもできなかったんです。それが、先発した2試合はうまく右足を使えていたんで、『右足を起点に上体をリラックスして動かしていけば、全体のバランスもよくなる』と話しました」

 松井はプロになって初めて、無休のオフを過ごした。「いつまでも力投型で投げ続けられない。いつかは変えないとダメだと思っていた」と言う。

【次ページ】 平石監督の「奪いに来い!」。

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