野球クロスロードBACK NUMBER
松井裕樹は守護神を再び奪い取る。
心に秘めた「今年、見てろよ!」。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2019/02/11 11:00
久米島での春季キャンプ、第1クールからブルペンで投げ込んだ松井祐樹。今季に懸ける意思を感じさせる。
平石監督の「奪いに来い!」。
1月の自主トレでは、ヤンキースの田中からアドバイスを受けることでフォームを固めていった。 ここ数年で一番いい状態と語るキャンプ。松井の順調な仕上がりは、平石監督の目にも同じように映っているようだ。
「動きが非常にいい。ボールもフォームのバランスも、すごくいい状態だと思いますね。去年、苦しんだ分、ひと皮むけたというかね、今年は成長した松井を見られるんじゃないかなって思って見ています」
指揮官も認めている。だからといって、現時点で「守護神候補」とは明言しない。
「奪いに来い!」
平石監督は松井へのメッセージを強めた。
「本人にもそう言っていますしね。後ろで投げたい気持ちは誰よりも強いのは僕も知っていますし、本人が一番わかっている」
指揮官の言葉を報道陣から伝え聞かされた松井は「よっしゃ!」とこぶしを握り、呼応するように守護神争いに宣戦布告する。
「監督がそう見てくれているのは嬉しいですね。僕も『9回以外は投げるつもりはない』って気持ちでやっているんで」
闘争心がグツグツと湧き上がる。
「あります、全然あります!」
メディアの前では言葉を選びながら話す松井ではあるが、その熱さが冷めることはない。
――心のなかでは「今年見てろよ、この野郎!」って、感情をさらけ出しながら見返したい気持ちが強いんじゃないの?
松井の心情に探りを入れると、「わかります?」と不敵に笑う。
「あります、あります。全然あります! もちろん前向きな感情ですけどね。そういう想いは、今年は特に強いです」
キャンプのブルペンで捕手の乾いたミットの音が反響する。ボールをリリースする左腕と右足が前を向く。その先にあるのは、松井の本来の居場所である。