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テコンドー元世界女王・濱田真由が
30%の出来でも日本一を狙う理由。 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byKoji Fuse

posted2019/02/10 10:00

テコンドー元世界女王・濱田真由が30%の出来でも日本一を狙う理由。<Number Web> photograph by Koji Fuse

濱田真由はかつて世界一に輝いた経験を持つ。足の状態が万全でなくても、再び頂点を目指す意欲に満ちあふれている。

股関節の負担をかける蹴り方。

 医者からは「股関節唇(しん)損傷」と診断された。グロインペイン症候群。サッカー選手に多く見られる症状だ。激しいトレーニングによって、足の付け根に痛みが生じる。

 1~2カ月で改善される症例が多い一方、騙し騙しプレイを続けるトップアスリートの中には痛みと付き合い続けている者も。濱田は後者のケースだった。

 意外にも2015年の世界選手権を迎える直前、症状は最も悪かったという。

「ただ、その前にいっぱい練習を積めていたので。大会の1カ月くらい前から右足の太股が痛くなったけど、(練習のおかげで)融通が利いた感じですね」

 振り返ってみれば、もう4~5年前から股関節には鈍痛を感じていた。しかし、ケガだとは意識せず、練習と試合をしては休む。そんなサイクルを繰り返していた。

「もともと股関節は柔らかい方だと思うけど、その部分に頼っていた代償のような気がします。股関節に負担をかけるような、おかしな蹴り方をしていた自分が悪い」

海外武者修行での目的とは。

 ケガだということをしっかりと認識したのは、わずか1年ほど前のことだ。

「ケガだと思ったら、うまく向き合えたというか、しっかり受け止めることが大事だと思うようになりました。いろいろわかってきたかなという感じがします」

 だからこそ昨年の長期に及ぶ海外武者修行には現役の世界チャンピオンと一緒に練習する以外にも様々な目的があった。

「いまのオリンピックレベルがどんなものであるのかを徐々に感じたかった」

 試合の勘を取り戻そうと、イギリスとクロアチアでは久々に大会にも出場している。前者ではテコンドーのメジャーな大会のひとつであるグランプリシリーズに出場して初戦敗退に終わったが、後者で開催された国際大会では準優勝を飾ることができた。

「どれくらい今の自分にできるのか。試していた感じでした」

【次ページ】 30%でもやらないといけない。

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