ニッポン野球音頭BACK NUMBER
「普通の人でいたかったです」
須田幸太はベイスターズに殉じた。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byKyodo News
posted2019/02/08 17:30
プロ人生最初で最後のセーブを挙げた試合での須田幸太。ベイスターズで過ごした日々に、悔いは無い。
160kmは投げられないけど……。
プロ野球には、2種類の選手がいると思う。
1つは、たとえば大谷翔平のような、圧倒的な体躯を誇る者たちだ。
もう1つは、たとえばここにいる須田のような「普通の人+α」の者たちだ。
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巨躯に筋肉の鎧をまとい、160km超のストレートを投げるような人間に、ぼくはどう転んだってなれないと思う。でも、ちょっとしたきっかけさえあれば、ぼくは須田になれる可能性はあったのではないかと夢想する。
そんなことを言われて怒っても不思議ではないのに、須田は怒るどころか笑みを浮かべてこう言うのだ。
「そうそう。おれでもいけるじゃんって思いますよね」
はっきりと意識はしていなくても、ずっと、親近感を覚えていたのだと思う。だから突然いなくなってしまった須田の本当の思いを聞かずにはいられなくなったのだと思う。
会いに来てよかった。本音を聞けた。
須田と初めて普通の人どうしの会話ができたような気がして、うれしかった。