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まさに「国民の息子」。根尾昂が
メディアもファンも惹きつける理由。
posted2019/01/31 10:30
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
決してオーバーではなく「寝ても覚めても」であり「明けても暮れても」である。年が明け、合宿所への引っ越しを済ませたあたりから、中日ドラゴンズの話題の中心にはドラフト1位の根尾昂がいる。
報道陣は根尾の歩く後ろを追い、前でも待ち構えている。自主トレが行われているナゴヤ球場にテレビ局の中継車がやってきたこともある。
肌感覚でいえば報道される8割は根尾がらみだろうか。ちょうど1年前に騒ぎになったのが松坂大輔。さすがに忘れられたとは言わないが、今や根尾に関するコメントを平成の怪物が求められる事態になっている。
なぜ根尾なのか。甲子園で春夏連覇を達成した。つまり、結果を残したというのは大きな理由となる。しかし、それがすべてとは思えない。
大阪桐蔭の他の3人と比べると。
なぜなら、大阪桐蔭からは根尾を含めて4人がドラフト指名され、プロの世界に飛び込んだが、同じように騒がれているわけではないからだ。
ちなみに同一高校から同一ドラフトで4人が指名されたのは、今回で5例目。ただし1966年の中京商(現中京大中京)と平安(現龍谷大平安)は国体出場校などを対象とした2次ドラフトでのこと。1976年の崇徳は2人が入団拒否したため、指名された4人がそろって入団したのは2001年の日大三以来となる。
根尾以外の3選手を改めて紹介する。ロッテ1位の藤原恭大は走攻守そろった大型外野手で、根尾も選ばれなかった2年生でのU18日本代表入りも果たしている。巨人4位の横川凱は身長190cmの大型左腕。エースナンバーをつけた日本ハム5位の柿木蓮との両輪がいればこそ、夏の根尾は遊撃手にほぼ専念できたのだ。
つまり「最強世代」の名にふさわしい陣容だったのだが、注目度では明らかに根尾が抜けている。今シーズンのルーキーで対抗できるのは、金足農から日本ハム1位指名された吉田輝星だけだろう。非常に優れた才能の持ち主なのは間違いないが、大阪桐蔭は根尾だけのチームではなかったし、高校野球ファンだってそうは思っていないはずだ。