フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
絶対女王がいない時代の欧州選手権。
不調のザギトワは、生き残れるか?
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byNurPhoto via Getty Images
posted2019/01/30 11:00
人として、女性として当然の成長期ではあるのだが……世界トップクラスのスケーターにとっては命取りにもなりかねない事態でもある。
一体ザギトワに何が起きたのか?
ちょうど今から1年ほど前に、15歳で平昌オリンピックチャンピオンになったザギトワ。夏を経て秋に競技に戻ってくると、半年の間に昨シーズンとは別な選手になっていた。
まだあどけなさの残る少女から、よくバランスのとれたスタイルの美しいティーネイジャーに成長していたのだ。
昨年11月のヘルシンキGP大会の記者会見で、平昌オリンピックからどのくらい身長が伸びたのかと聞かれ、ザギトワはロシア語通訳を通してこう答えた。
「平昌オリンピックから、身長は5~6センチ伸びました。でもどうしてみんな、私の身長のことを聞きたがるのかしら。誰でも成長するでしょう。ノーマルなことだと思うけど」
苦笑しながらも、ちょっと苛立ちの感じられる、むきになったような答えだった。
それは彼女が、多くの記者が繰り返したこの質問の真意が、「成長したことで、ジャンプの安定度に影響はないのか」という意味であることを理解していたからに違いない。
平昌オリンピックから2018年3月のミラノ世界選手権のわずか4週間の間に6センチも伸びたという噂まであり、実際ミラノでは5位に終わっていた。
12月のロシア選手権でも5位に終わり、しばらく練習に戻るのが嫌になったことを告白している。
後半のジャンプで苦戦。
今シーズンの初戦、ザギトワは9月のネーベルホルン杯で快調なスタートをきり、ヘルシンキ大会、ロステレコム杯ではいずれもフリー後半でミスが出たものの連覇を果たした。だがGPファイナルでは良い演技を見せたが、紀平梨花に敗れて2位に終わった。
ジャンプは明らかに昨シーズンほどの勢いはない。
韓国・江陵の練習リンクで3ループを6連続跳んで見せた少女は、もうすでにいなかった。
昨シーズンは、SPとフリーを通して、全ジャンプをプログラムの後半に跳んでいた。それが批判の対象ともなり、今シーズンから後半の10%ボーナスがつくジャンプの数がフリーで最大3度までと制限された。
これは俗に「ザギトワ・ルール」とも呼ばれている。
だが今季このルールが設置されていなくても、今の彼女にはおそらく全ジャンプを後半に跳ぶことは厳しいだろう。
欧州選手権でも、後半の3つのジャンプエレメンツすべてで回転不足の判定を受けている。