松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
修造感服!パラカヌー瀬立モニカは
今の自分を「最強」と言い切った。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/01/29 07:00
冬の川岸にあってもその寒さを吹き飛ばすほど元気な2人。これからもスポーツを通じて多くの人に勇気と希望を与え続ける。
「ケンカができるようになった」
瀬立「ケガをする前って、友だちとフツーにケンカができていたんですよ。でも自分に自信がなくなったことでまったくケンカをしなくなって。モニカはいつも笑っているよねって。平穏に、なるべく波風を立てないように暮らしてきたんです。でも今はちゃんと言い合いもできるし、良い意味でケンカもできるようになりました。コーチとのコミュニケーションも、すごく増えましたね」
松岡「今日来ていただいているのは、西明美コーチと北本忍さん。西コーチは怖そうだから一番最後に聞きますね(笑)」
西「怖くないです!(笑)」
松岡「北本さんはこれまで3度オリンピックに出場しているカヌー界のレジェンドです。どんなきっかけでモニカさんを指導するようになったんですか」
北本「NHKの『めざせ! 2020年のパラリンピアン』という、先輩が後輩に教える番組で初めて会ったのがきっかけです。リオパラリンピックの半年前ぐらいでしたね。今は月に2度くらい、ここに来て気づいたことを伝えたりしています』
松岡「モニカさん、最初にあった頃と印象は変わりましたか」
北本「ぜんぜん違います」
松岡「何が変わりました」
北本「まず体の大きさが見た目にも大きくなったし、舟の上での技術もすごく進歩しています。それに、以前よりもたくさん質問をしてくれるようにもなりました。それが先ほど話されていた積極性が出てきた、ということだと思います」
松岡「東京に向けて、一緒に戦っている感じが出てきた」
北本「そうですね。私はメダルが獲れなかったので、彼女には絶対にメダルを獲ってほしい。すごく器用で、会うたびに上達していくので、私もアドバイスするのが楽しいです」
松岡「モニカさん、笑っているけど、意外とプレッシャーだね、これは」
瀬立「今、胃がキュッてなりました」
松岡「でも、メダルを獲れると信じてくれる人が多くなるのはすごく良いことだと思う。単なるプレッシャーじゃなくて、心の底から思ってくれていることはちゃんと通じるじゃないですか。そこまでコーチに言わせたことがすごいんです」
北本「彼女もメダルへの意欲を口に出して言ってくれるし、見ていて本当にできるんじゃないかって思います」
松岡「北本さんから見た、モニカさんの武器って何ですか」
北本「純粋で素直なことが一番だと思いますし、あとはすごく頭が良い。賢いので、こちらが言ったことを理解して、自分なりに実践するのが上手です」
松岡「漕ぐという部分ではどうですか。人よりも回数が漕げるとか、ここの力が強いとか、モニカさんの漕ぎに特徴があるとすれば」
北本「どこだろうな。彼女は体の中で使える部分がすごく少ないと思うんですけど、その中でもそれを最大限に生かす能力や、考える力を持っているんですね。パラカヌーを指導する前は、これまで自分がやってきたカヌーとほとんど何も変わらないと思っていたんです。でも、実際に指導してみるとぜんぜん違うし、私でも彼女のカヌーは乗りこなせない。カヌーって、実は足の使い方が重要なんですけど、彼女は胸から下を使えないから、もちろん足も使えない。その状況でカヌーを操ることがどれほど難しいか……。でも彼女はちゃんと自分で答えを見つけることができるんです」