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“底知れぬ男”長野久義へ――。
ある巨人ファンからの惜別コラム。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKyodo News
posted2019/01/08 12:20
巨人入団1年目の長野久義。ホームランを打ってファンに挨拶をしているシーン。
チームを変えたいのは分かるが……。
しかし、だ。だからといって、チームトップクラスの人気を誇り、V3にもど真ん中で貢献した功労者をこんな形で放出してしまっていいのだろうか? 最近の巨人には「プロ野球は人気商売であり興行でもある」という視点が決定的に欠けている気がする。
優勝から遠ざかり、チームをベースから変えたいのは分かる。だが、“地上波中継最後のスーパースター”高橋由伸が、20年間背負った栄光の背番号24を新外国人投手にあっさり渡してしまったり、内海や長野を軽くプロテクトから外したりと、選手とファンが長年時間をかけて築き上げたストーリーをあっさりと捨ててしまう。
そして、皮肉にもその手のストーリーはいくらカネを積んでも買えやしないのである。
「思い通りに体が動くのは、あと10年」
実は広島サイドは1カ月以上前から「リストを見て、それなりの選手がいればいくと思う。1年でも活躍できるなら(年俸が)高くても問題ない」(12月1日付日刊スポーツ)と牽制していた。それでも、巨人サイドはあえて長野を外したわけだ。山口壽一オーナーがどうエクスキューズしても、獲られても仕方がない選手と位置付けたということだろう。
死にたいくらいに憧れた巨人から、こんな形で出されても「強い広島カープに選んでいただけたことは選手冥利につきます」と冷静なコメントを出した長野は、さすが人格者だなと思った。
さて、2019年の広島カープ・長野久義はどんなプレーを見せてくれるだろうか?
10年前の『週刊ベースボール 2009ドラフト総決算号』インタビューを今読むと非常に興味深い。25歳の遅いプロ入りについて聞かれた長野はこう答えているのだ。
「脂が乗り切った状態。つまり、思い通りに体が動くのは、あと10年くらいだと思います。10年後は35歳ですか……。そこまでやれる人も、一握りですからね」
まさか、その35歳シーズンを広島で迎えるとは夢にも思わなかったはずだ。