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セリエAで最もゴールを奪うクラブ、
アタランタとガスペリーニの美学。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/01/09 10:30
70年以上の歴史を誇るクラブは2016年のガスペリーニ監督の就任を境に、ここ2年は4位、7位と上位へ躍進している。
戦術家ガスペリーニの手腕。
すぐに疲れたと口にするイリチッチは、チームメイトたちから「おばあちゃん」というニックネームを頂戴している。だが、スタミナに乏しく気紛れな“イリチッチおばあちゃん”が一度本気になれば、彼の左足を止められるDFはそうそういないことを仲間たちはよくわかっている。
イリチッチとサパタの2トップの他にも、前半戦5ゴール6アシストの主将FWゴメスは健在で、センターバックながらすでに4得点を決めている若手の有望株DFマンチーニも台頭。知名度こそ低いもののMFデローンとMFフロイラーの中盤からの配球術には唸らされる。
戦術家ガスペリーニは、今季も見事な手腕でチームを立て直してきた。
2018年夏の移籍市場では、FWペターニャ(現スパル)やMFクリスタンテ(ローマ)、MFスピナッツォーラ(ユベントス)にDFカルダーラ(ミラン)といった昨季の7位躍進を支えた若手たちが引き抜かれたが、中堅選手らの奮闘で2次予選から2年連続のEL出場を目指した。
8月初旬の2次予選2ndレグでFKサラエボを8-0で撃破した試合は、イタリア勢による欧州カップ戦でのアウェーゲーム最多得点記録となった。
2カ月近く低迷したが。
だが、3次予選でハポエル・ハイファを下した後、臨んだコペンハーゲンとのプレーオフでアタランタの歯車は狂った。2試合ともに両チーム無得点の末に、アタランタは敵地でのPK戦に散った。
ELへの夢破れた試合直後、「今季の目標はやはり欧州カップ戦出場圏か」と問うた地元記者団にガスペリーニは、何と無神経なのかと激昂した。
大都市圏クラブとの間にある戦力と資金力の差を乗り越える戦いに三たび挑むには、その覚悟を整え、新獲得選手たちと練習を重ねる時間が必要だった。
“コペンハーゲン・ショック”は後を引き、アタランタは2カ月近く低迷した。10月上旬の8節でサンプドリアに0-1で敗れたとき、アタランタは欧州カップ戦どころか降格圏ギリギリの17位にいたのである。