セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエAで最もゴールを奪うクラブ、
アタランタとガスペリーニの美学。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/01/09 10:30
70年以上の歴史を誇るクラブは2016年のガスペリーニ監督の就任を境に、ここ2年は4位、7位と上位へ躍進している。
ポゼッションと得点と自尊心。
主将ゴメスも指揮官への敬意を込めて述べている。
「(ガスペリーニは)おそらく万人向けの監督じゃない」
前半戦のOptaデータによると、アタランタは最多得点チームでありながら総シュート数では6位に留まっている。パス成功率は83.1%で8位だ。高さ勝負になりがちなクロスには頼らず、ファウルも少ない。
ガスペリーニのサッカーは、ボールポゼッションと数的優位を作って相手を崩すことを念頭に置いている。理想は失点と黒星のリスクを伴うが、ゴールによって選手たちに自分たちはやれるという自尊心を与えることができる。貪欲にゴールを求めながら、アタランタは順位をじわじわと上げてきた。
3-4-1-2をベースにする今季のアタランタは、強豪を相手にしたとき滅法強い。
ローマとミランはホームで彼らに勝点1を奪われ、インテルは4失点惨敗の醜態を晒した。ラツィオも0-1で競り負けている。
ユーベも完全に手玉に取った。
クリスマス直後の大一番ユーベ戦では、開始2分のオウンゴールによって追う展開になるもエースFWロナウドと司令塔ピアニッチをベンチに温存した王者を完全に手玉に取り、サパタの2ゴールで逆転した。
後半から慌てて投入されたロナウドの同点弾のせいで金星を逃したが、ガスペリーニは2-1でリードしていた時間帯に守備固めどころか3-4-3へスイッチし、なおもユーベからゴールを奪おうとした。
指揮官とチームの意気に本拠地アトレーティ・アッズーリ・ディターリアを埋めた2万人は熱狂した。
試合後「正直勝てたという悔しさは残る」と吐露したガスペリーニだったが、付け足した言葉は晴れやかだった。
「私だって勝つことは好きだ。だが、もっと大事なのはいいプレーをすることだ。いいプレーをするチームに歓喜するファンを持つことはプライスレスの価値がある」