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日本中を魅了したカーリング女子の
「いつでもステイ・ポジティブ!」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2018/12/31 17:00
カーリング史上初のメダル獲得。流行語大賞に選ばれた彼女たちだが、何よりも人の心を打ったのはその戦いぶりだ。
それぞれが迷い、現チームに。
吉田知那美は以前の取材で語っている。
「いろいろ大変なこともあります。でもカーリングができること、このチームでやれることに感謝しているから笑顔なんです」
ソチ五輪に出場した吉田知那美は、大会終了直後、次のシーズンにはチームを離れるようにと告げられた。突然の戦力外通告に、一時はカーリングをやめてしまおうかとも考えたが、LS北見に加わることを決め、今日がある。
藤澤五月もまた、道を迷い、たどり着いたのがこのチームだった。中部電力時代、ソチ五輪出場を逃すとチームへの支援は大幅に縮小され、同好会レベルでの活動を余儀なくされた。もっと上を目指したい。そう考えていた藤澤は、LS北見へと加入する。チームに加わった直後は練習量の多さと、その内容にも驚かされたという。
「自分たちでメニューを考え、練習していました。私に足りなかったのは、自ら取り組む姿勢だったと気づきました」
メンバーが互いに意見をぶつけあい、話し合う光景も新鮮だった。
「ここまで話しあってるんだ、みんないっぱい意見を言いあうんだなと思いました」
やがて藤澤の表情からは、かつて見せていたチームの全てを背負うような厳しさがなくなり、試合でも柔和な雰囲気を醸し出すようになっていった。
本橋が夢見た「人間力」。
チームキャプテンの本橋麻里はうっすらと涙をためながら、感慨を込めて言った。
「ほんとうに、後輩たちがその通りに育って、たくましい姿で戦ってくれたことに感謝しかないです」
「その通り」とは本橋の理想を指していた。
LS北見は8年前、チーム青森でトリノ、バンクーバー五輪に出場した本橋が、郷里である北海道北見市常呂町で立ち上げたチームだ。メダルを手にした今、当時をあらためて思う。
「カナダやスウェーデンのチームを見て素晴らしいなと思い、人間力のあるチームを作りたいと思ったのがきっかけでした」