オリンピックPRESSBACK NUMBER
30歳で公務員を辞めてオランダへ。
ホッケー田中健太、最強国での日々。
posted2018/12/24 09:00
text by
中田徹Toru Nakata
photograph by
AFLO
男子ホッケーのトッププレーヤーは、公務員として働きながらクラブチームでプレーするケースが多い。日本代表のエースストライカー、田中健太は和歌山県庁スポーツ課で仕事をしつつ、箕島クラブで競技を続けていた。
そんな田中が「オランダリーグでプレーする」と言い出した。すでに30歳。ホッケーの世界では、もう若くはない。親からは「あんた、その歳で公務員辞めて、アホちゃう!?」と言われ、ホッケー関係者からは「お前なら、オランダに行かなくてもオリンピックに出られる。
公務員を辞めてまで、オランダに行ってプロになる必要が本当にあるのか?」と反対された。それでも、田中は自分の意思を貫き、6月、オランダ1部リーグのHGCに入団した。
公務員の安定に燻って。
立命館大学に通っていた頃、田中はドイツのクラブからオファーを貰っていた。だが、当時の日本男子代表は1968年メキシコ大会を最後にオリンピック出場から遠ざかっており、田中はホッケーだけで生計を立てることに不安を覚えていた。
「ドイツに行くか、就職するか、すごく迷ったんです。この先、ホッケーを続けても、どうなるか分からないから不安だったので、公務員という安定を取りました。そのことが、僕の中ですごく燻ってました」
ホッケーの世界では、オリンピック開催国に対して自動的に出場権が保障されているわけではない。国際ホッケー連盟は今年5月、男子・女子ホッケー日本代表の東京オリンピック出場を正式に認めた。
「この時に『オランダに行こう』と吹っ切れました」
田中はHGCと2年契約を交わした。日本人男子として初めてのオランダ1部リーグ・プレーヤーが誕生した瞬間だった。