アジア大会で起こした奇跡。

　このアジア大会で、日本が優勝した。決勝ではマレーシアに1－4という大差を付けられながらも、ラスト10秒で同点に追いつき6－6の引き分けに。その後、シュートアウトで雌雄を決し、日本が初優勝した。

「ジャカルタの奇跡」と言われるほどの、凄まじい勝負だった。

「1－4とされた後、『もう試合は決まった』というのが観客の熱で伝わってきた。あれだけ点差を離されて、吹っ切れましたね。勝負を捨てたわけじゃありませんが、ある意味、気持ちが楽になりました。マレーシアの方がプレッシャーを感じたみたいです。彼らは優勝しないと、オリンピック出場を決定できなかったので」

　田中が金メダルとともにオランダに戻ってくると、HGCのチームメートから「日本が優勝するなんて信じられない」と驚かれたという。

　アジアではインドが飛び抜けて強く、その下にパキスタン、韓国、マレーシアが第2勢力を作っている。オランダ人は世界のホッケー事情に通じているから、選手たちも日本の優勝を世紀の番狂わせとして驚いたのだ。

最初は舐められたけど。

　今季のHGCは11節を終えた時点で4位に付けている。チームの目標は4位に入ってプレーオフに出ること。そしてEHLに出場することだ。田中自身は、オランダリーグに参戦しながら何を思うのだろうか。

「最初、僕がHGCに来た時、チームメートから舐められていたと思います。『日本人がホッケーをできるわけない。なんで、コイツを獲ってきたのか』。そんな空気を感じました。だけど、やっぱりプレーで魅せていったら、パスが来るようになりました。

　日本のホッケーはポゼッションする時にバックパスを使うんです。だけど、オランダは前に、前に、前に。それが合いますね。日本代表の監督がオランダ人のアイクマンさんなんですが、『お前ら、バックパスしすぎ』って言うんです。僕も、オランダに来る前は『この状況ならバックパスを使うだろう!?』って思っていたんですが、オランダに来てやっとアイクマン監督の言う意味がわかりました。今、そのことを肌で感じてます」

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