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「みんながみんな田臥勇太じゃない」
Bリーグ首位栃木に感じる自負心。
text by
吉川哲彦Akihiko Yoshikawa
photograph byB.LEAGUE
posted2018/12/22 09:00
今シーズンは最初の6試合に出場したのち負傷で欠場が続いている田臥勇太。ベンチからチームを鼓舞する。
田臥を欠いても首位キープ。
難局の12月前半を乗りきり、リーグ戦20勝一番乗りを果たした栃木。リーグ全体の首位も堅持しているこの状況で特筆すべきは、田臥勇太を欠いての戦いが続いているという点だ。
開幕7試合目から続いている田臥の欠場は、新潟に連勝した第14節の時点で18試合にまで伸びた。日本人初のNBAプレーヤーであり、チームの精神的支柱でもある田臥の不在は、傍から見れば大きな痛手のはずだ。
なぜ栃木は田臥抜きでも勝てているのか? 安齋竜三ヘッドコーチはこう説明する。
「自分たちがやってきたことをしっかり出せれば戦えるという自信は、プレシーズンゲームを10試合くらいやってついている。つまり、やるべきことを1人ひとりが理解してくれているというところだと思います。
チームルールとして決めたことを全員が守ろうと努力している。それプラス、ディフェンスの強度とリバウンド・ルーズボールの意識です。そこはまだ完璧ではないというか、一生完璧にはならないと思いますが、みんながそこに近づこうという意識を持って取り組んでいるのが、今の結果につながっていると思います」
田臥さんがいてもいなくても。
田臥に頼ろうとしないのは、「チーム力」を強調する栃木のチームカラーに因るところが大きい。
安齋ヘッドコーチは「彼もチームの一員なので、求めることは他の選手と同じ」とも話しており、決して田臥を特別扱いしない。新潟との2戦目でロシターを欠いて勝利を収めたことからもわかるように、スーパースターに依存しない姿勢が今の栃木の好調ぶりを支えている。
それは、ポイントガードとして田臥に代わってゲームをコントロールしている渡邉の証言にもよく表れている。「田臥不在を受けて、普段以上にチームを引っ張る意識があるか」という問いに対し、渡邉は食い気味に「ないですね」と答える。
「田臥さんがいてもいなくても、いつも引っ張っているつもりなので。今シーズンはライアン(ロシター)もいろいろ気にかけてチームメートに声をかけてくれているし、遠藤(祐亮)なんかもリーダーシップが出てきた。そういう雰囲気が自然に出ていて、誰かがいないからあえて意識してやっているということはないです」