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ヴェルディ守護神・上福元直人の
カシージャスと同じ儀式と勇気。
posted2018/12/07 11:30
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
J.LEAGUE
ゴールを背にし、まずは右のポストに頭を寄せて両手で包む。ジャンプしてクロスバーを手で触れ、左のポストにも同じ所作。東京ヴェルディのゴールマウスを守る上福元直人が、前後半のキックオフの前に必ず行うルーティーンだ。
縁起を担ぐ趣味はない。占いも信じない。ゲームに臨むにあたっての、神聖な儀式のようなものである。
「きっかけは、スペイン代表やレアル・マドリーで活躍したイケル・カシージャスのプレーです。ある試合で、シュートがポストに当たり、跳ね返ってきたボールをカシージャスがキャッチ。すぐさま起き上がって、ポストにハグをしていたんですね。危ないところを助けてくれてありがとう、と」
土壇場でのヘディングシュート。
上福元にとって、カシージャスはお手本とするキーパーのひとりだ。近年、ゴールキーパーは大型化が顕著で、180cm台前半の両者はともに小柄な部類に入る。
だからこそ、シュートに対する反応、細かなステップワーク、予測力に磨きをかけてきた。天性の体躯で及ばない者は、知恵と勇気がなければ、この厳しい世界で生き残れない。
12月2日、J1参入プレーオフ2回戦。東京Vは終了間際の劇的なゴールで、横浜FCを下した。
この日、唯一のゴールが生まれたのは、掲示された7分のアディショナルタイムが尽きかけた90+6分だった。東京Vが得たコーナーキックの場面、一縷の望みをかけて上福元が攻撃に加わる。佐藤優平のアウトスウィングのキック、ニアサイドに曲がり落ちてくる球筋に頭から飛び込んだのは上福元。南雄太がシュートをはじき、こぼれ球をドウグラス・ヴィエイラが押し込んだ。