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浦和・槙野&宇賀神の走り方改革。
常に踵を上げて、手はグーからパー。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byURAWA REDS
posted2018/12/08 10:00
手を「パー」にして走り抜ける槙野智章。30代になっても学ぶ意欲は旺盛だ。
宇賀神「力感なく走れている」
5年前から秋本氏の指導を受けている浦和レッズの宇賀神友弥は、その効果を体感している1人。
「最高速度も上がっていますが、前までは100%の力で100%のスピードを出していたけれど、あるときから80%、90%の力で100%を出せるようになった。一歩の“ビュン”と出る感じが違うなって。そのおかげで、スプリント回数が増えたし、疲れる連戦でも走れるようになってきた。いまは力感なく走れている感覚がある」
選手層の厚い浦和で、スタミナとスピードが求められるアウトサイドのポジションを長年守り続けている男の言葉には説得力がある。フォームの改善だけではなく、ささいな助言もプラスになった。
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走るときの手を「グー」から「パー」にしただけで、自然と力が抜けた。どちらが正しいということはないが、宇賀神の場合はそれが力感につながっていたからだ。過去の走りを思い返し、「肩に力が入り過ぎていた」と苦笑する。いまでも試合の映像などをチェックしてもらい、走りのトレーニングを続けている。
「スピードを出すために必要なのは、力ではなく技術。僕はまだまだ伸びしろがたっぷりある」と口元を緩める。
ワールドクラスのお手本は……。
指導する選手によって走り方が異なり、修正するポイントも変わってくる。浦和の槙野智章の場合は、姿勢を崩して走り出す癖があった。1対1の守備のときにボールを見すぎて背中が丸まる傾向があり、ダッシュの第一歩が遅れていたのだ。
秋本氏はタブレット端末を取り出し、昨季、ACLで上海上港(中国)のフッキと対峙したシーンを見せてくれた。
「姿勢が崩れて走り出してますよね? 反転したとき、瞬時に正しい(まっすぐな)姿勢をつくらないとスピードは出ません。接地もかかとからになっています。かかとは浮かせないとダメです。いま槙野選手とは反転してスピードをうまく出す練習をしています」
秋本氏がタブレット端末に保存しているレアル・マドリーのセンターバック、セルヒオ・ラモスの反転シーンを見ると、まっすぐな姿勢を保ち、かかとを浮かせていた。
ほかに手本となる選手はボール奪取のスペシャリスト、チェルシーのエンゴロ・カンテ。
「常にかかとが浮いているんです。跳ねるように走り出して、守備をしています」