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休まない剛腕、佐藤達也の引退。
オリ後輩が惚れた「天性の人柄」。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2018/11/30 07:30

休まない剛腕、佐藤達也の引退。オリ後輩が惚れた「天性の人柄」。<Number Web> photograph by Kyodo News

11月25日に京セラドームで行われたファン感で最後のユニフォーム姿を披露。家族からも花束が贈られた。

選手として可能性があるなら。

 しかし「その時自分がやらなきゃいけないことをやってきただけ」と、佐藤にそれを悔やむ様子はない。

 今年もシーズン最終戦のあと、秋季練習が始まるまでのオフの間、シーンと静まり返った舞洲の室内練習場で、佐藤は1人、ネットに向かって黙々とボールを投げていた。

 10月29日に正式に戦力外通告を受けるまで、その姿勢は変わらなかった。

「その前から球団とはちょっとずつ話し合いはしていましたけど、選手として可能性があるうちは、ちゃんとやろうという思いでやっていました」

 別の環境で選手生活を続ける選択肢もあったが、佐藤は引退を決断した。

「そりゃあもちろん、もっともっと長くやりたいという気持ちはありますけど、やっぱりチームにはお世話になりましたし、これからは(球団職員という)違うかたちで、という話もしていただいていたので、どこかで線を引くならここかなと思って、決めました」

印象的な2014年の2つの出来事。

 7年間の現役生活で一番印象に残った出来事として挙げたのは、2014年の「最後にあと一歩、届かなかった試合」。ソフトバンクとの直接対決に敗れ、目の前で胴上げを見せられた2014年10月2日のヤフオクドームでの試合だ。

 それともう1つ、チームが2014年8月に達成した「7回終了時点でリードしている試合は100連勝」という偉業だった。

「僕の中であれは一番うれしかった。自分だけじゃなく、当時いたピッチャーみんなで作れた記録。その中に入れたことが、本当にうれしかったですね」

 一方で、「このチームで優勝できなかった。それだけが心残り」と語った。

「2014年は、『あと1個、僕が負けを減らしていれば』という思いがすごくあります。そこは本当に、球団にも、ファンの人にも、申し訳ない」

【次ページ】 「1個負けが減っていれば」

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