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出口クリスタは東京五輪に出たい。
カナダ柔道に出会い新境地を開拓。 

text by

朴鐘泰

朴鐘泰Park Jong Tae

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photograph byWataru Sato

posted2018/11/23 08:00

出口クリスタは東京五輪に出たい。カナダ柔道に出会い新境地を開拓。<Number Web> photograph by Wataru Sato

カナダ代表としてオリンピック出場を目指す出口クリスタ、パワー勝負ならば誰にも負けない。

初出場の世界選手権で銅メダル。

 今春、大学を卒業した出口は、日本生命に所属した。オフィスは甲府支社。トレーニングの拠点は変わらず、母校・山梨学院大の道場である。「なんか、大学5年生みたいですけどね」と笑う。会社の理解もあり、通常業務をこなしながら練習に励み、カナダ代表としての試合があれば、それを優先することができる。

 社会人になっても、出口の勢いは止まらなかった。その後も3大会連続でオール一本勝ち。国際大会連続一本勝ちは26にまで達した。

「今までこれだけ連戦を重ねて、しかも、いろんな国に行くこともなかった。試合をたくさんすることで、学べたものもたくさんありました。移動や宿泊も含めて、知らない場所で試合をするのは大変でしたけど、逆に『やるしかない』と開き直ることもできた。その心の余裕を持てたのも大きかったですね」

 そして今年9月、初出場となった世界選手権(アゼルバイジャン)では、銅メダルを獲得した。3位決定戦の後の意外な光景が、出口の脳裏に色濃く残されている。

「準決勝で同い年の芳田(司)に負けて、自分としてはものすごく悔しくて、3決で何とか勝ってホッとはしたけど、悔しさは全然消えなかったんです。ああ、負けたってガックリしながらコーチのサーシャのところに行くと、満面の笑みなんです。『本当によく頑張った!』って。あれ? 銅でもよかったんじゃない? って思えてしまうのは、日本代表を目指していた時にはない感情でした」

カナダの超プラス思考が肌に合った。

 カナダを選んで自身が好調の要因を、出口はこう分析している。

「カナダのチーム内ではすごく気持ちの切り替えが早くて、負けても怒られない。次、頑張ろう! って、超プラス思考なんです。それが私の性分にウマが合ったというか。今これだけ結果が出てるのも、技術面よりも、メンタル面のほうが大きいと思います。『負けてもいい』というスタンスが、すごくやりやすい。以前は『負けたらあとがない』でした。それが『負けても次がある』となれば、必要以上に気負う必要もないし、だから、決勝に進出する確率も上がっているんだと思います」

 現在、世界ランキングは6位。カナダ勢ではトップである。1年半後に控えた東京五輪に向けて、課題はいくつかある。ケンカ四つ(相手が左組み)対策、技(特にかつぎ系)のレパートリーと組み手のパターンを増やす、等々。しかし、最重要課題は道場に行かずとも改善に取り組むことができる。

 それは、カナダ国歌『O Canada』の歌詞を覚えることである。

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