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出口クリスタは東京五輪に出たい。
カナダ柔道に出会い新境地を開拓。
posted2018/11/23 08:00
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph by
Wataru Sato
凱旋なるか。日本生まれの女子柔道カナダ代表選手、出口クリスタが、11月24日に行なわれるグランドスラム大阪(57kg級)に出場する。
出口はカナダ人の父と日本人の母を持つ。1995年10月29日、長野県塩尻市で生まれ、3歳から柔道を始めた。地元・長野の松商学園高校に進むと、1年生にしてインターハイ(52kg級)優勝。高3時には全日本ジュニア(57kg級)を制するなど、将来を嘱望される期待のホープだった。
そして高3の秋、2020年の東京五輪開催が決定する。出口は強く思った。
「オリンピックに、どうしても出たい」
しかし、現実は厳しかった。2014年の春、強豪の山梨学院大学に進学。大会に出場しても、まったく満足のいく成績を残せなくなった。
このままじゃまずい。オリンピックなんか絶対無理じゃん。不安と悩みを抱えながら、くすんだ鉛色の思いをかき消そうと一心に柔道に打ち込んでも、一向に結果は出ず、心はいつまでも晴れなかった。
カナダ代表を選ぶという選択肢。
トドメは2年前、2016年11月の講道館杯だった。2回戦敗退。山梨学院大3年の出口は、龍谷大1年の村井惟衣に、小内刈による有効で敗れた。ポイントは奪えずじまい。
オリンピックに出たい思いは変わらない。でも、自分には日本代表を背負うほどの実力はない。このままだと国内であっさり負けて終わり。でも、強くなりたい気持ちは、以前より強い。やっぱり、諦めるなんてできない。どうしても、オリンピックに出たい。ならば――。
出口には選択肢があった。父の祖国、カナダ代表を選ぶことである。
「高校の時にカナダからお誘いは受けたことがあるんです。ちょっと迷ったっちゃあ迷ったけど、そんなシリアスに迷いませんでした。まわりから『日本で一番になって、オリンピックで勝つから意味があるんじゃない?』って言われて一理あるな、と。でも、20代で講道館杯の2回戦で負けておいて、オリンピックなんて出られるわけないじゃないですか」