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出口クリスタは東京五輪に出たい。
カナダ柔道に出会い新境地を開拓。 

text by

朴鐘泰

朴鐘泰Park Jong Tae

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photograph byWataru Sato

posted2018/11/23 08:00

出口クリスタは東京五輪に出たい。カナダ柔道に出会い新境地を開拓。<Number Web> photograph by Wataru Sato

カナダ代表としてオリンピック出場を目指す出口クリスタ、パワー勝負ならば誰にも負けない。

ピアスをつけて練習する人も。

 柔道を続けることに変わりはないが、何せ環境が一変した。

 まず言葉。もともと父と母との会話は英語だったので、簡単な英会話ならできる。新しい仲間たちはフランス語訛りの英語をしゃべっている。最初は向こうの話すスピードに追いつかなくて聞き取れなかったが、時間が経つに連れて慣れてきた。

 独特の柔道用語もあった。例えば「タイオ」。基本的な投げ技である「体落し」のことだ。「一本背負い」は「イッポン」に省略されていた。

 しかし耳で感じたカルチャーショックより、目に入ってくる情報のインパクトのほうが、あまりにも強烈すぎた。

 化粧したまま練習している子がいる。ヘッドギアをつけて練習している子がいる。なんでヘッドギアつけてるの? と聞けば、「ピアスを安定させたいから」と返ってくる。寝技の練習をしていると、ヘソピをつけたままの子がいる……。

「最初は、はあ??? の連続でした。でも、もう慣れちゃいました。コーチが何か指摘するわけでもないし、みんな普通に練習してるし。ヘッドギアつけてピアス落ちないなら、まあいいかって」

出口の快進撃が始まった。

 カナダ代表チームの一員として初めて臨んだ国際大会は、2017年10月のグランドスラム・アブダビだった。結果は初戦敗退。つづく12月のグランドスラム東京も、初戦で逆転負けを喫した。

 なお、この時点でまだ出口は正式にカナダ代表となったわけではない。「入賞すればカナダ代表」という、まだセレクションの段階だった。

「これはマジでヤバい……」と、出口は冷や汗をかいた。しかし、チーム側は至ってポジティブだった。「心配しなくても大丈夫。グレードを下げて、次の大会に出てみよう」と。

 そこから出口の快進撃が始まった。今年2月、ヨーロッパオープン・オディベーラスでオール一本勝ち。首脳陣は「これでパリに出られるね!」と手放しで喜んだ。そして臨んだグランドスラム・パリでは、出口本人も驚きのオール一本勝ち。これで晴れて正式にカナダ代表の看板を背負うことになった。

【次ページ】 初出場の世界選手権で銅メダル。

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