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甲斐拓也、午前3時の素顔。
日本一当夜のインタビュー裏話。
text by
中川聡(Number編集部)Sou Nakagawa
photograph byNanae Suzuki
posted2018/11/08 14:00
“甲斐キャノン”による6連続盗塁刺で日本シリーズMVPとなった甲斐拓也。育成出身として初の栄誉に輝いた。
疲労困憊のはずだが笑い声。
「寒い、寒い」
美酒を浴び終えた選手たちがぶるぶると震えながら会場から出てきた。甲斐選手はこの日先発で好投したリック・バンデンハーク投手(198cm)と身長差約30センチのハイタッチを交わす。
さあいよいよインタビューに……と思ったところで、部屋へ戻ろうとする選手たちに球団関係者が声をかける。
「1時25分集合ね」
「え、もう1時なの?」
驚いた表情を見せたのは、優秀選手賞に輝いた中村晃外野手だ。そう、この時点で時刻は既に午前1時。選手たちはこの後、地元福岡で選手の声を待つファンのため、テレビ番組への出演を控えていたのだ。
約20分を一区切りに、用意されたテレビの番組ブースを2、3人の組を作って次々と回り続ける選手たち。6戦を戦い抜き、ビールかけでひとしきりはしゃいで疲労困憊のはずの選手たちだが、各ブースからは笑い声が聞こえてくる。
「小学校の頃から……」
深夜のテレビ中継出演を終え、ようやく甲斐選手が我々の前に現れたのは午前3時のことだった。目の下にクマを作りながらも、ひとつひとつの質問に丁寧に、時に笑顔を交えながら答えてくれた。
「小学生の頃からキャッチャーっていうのがなんでか好きで……」
捕手への愛が溢れ出る彼のインタビューはあっという間に終わってしまったが、その内容は余すところなくNumber965号「BASEBALL FINAL 2018 鷹が撃つ」でご紹介する。
「深夜3時の顔ってこんな感じですか?」
写真撮影の際、彼はそう言いながらおどけてくれた。次の瞬間には、真面目で柔らかい印象の好青年に早変わり。
育成出身の26歳は激動の日本シリーズを終え、充足感に満ちた表情をしていた。