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阪神・矢野新監督誕生に潜む矛盾。
金本路線は継続か、断絶なのか。
text by
藪恵壹Keiichi Yabu
photograph byKyodo News
posted2018/10/19 10:30
新監督就任が発表された矢野氏は二軍監督だった今季ファームを日本一に導いた。163盗塁、68勝はリーグ最多。
本拠地最終戦の光景と現状。
3年前、当時のオーナーや球団社長が頭を下げて、金本新監督を誕生させました。それとともにコーチ陣も刷新されました。ただ、今回、成績不振の責任を取って辞めたのは、今のところ(10月17日現在)、片岡コーチだけです。
コーチも選手もほとんど変わらずに、来季へ向かうのです。「頭」だけすげ替えて、あとはほぼ何も変わらない。来季へ向けて、期待感よりも不安の方が大きいのは、そういうことが影響しているのではないでしょうか。
金本監督が甲子園のファンに謝罪した本拠地最終戦、挨拶のためにグラウンドへ出てきたシーンが思い浮かびます。
金本監督が先頭を歩いて、そのあとにコーチや選手がぞろぞろと続いて出てきました。普通は逆ではないでしょうか。あの光景が現状を象徴しているような気がしてなりません。
チーム変革の好機のはずが。
今年、セ・リーグで下位に沈んだのはタイガースとドラゴンズです。この2球団に共通しているのは「世代交代」ができていないところです。西武や日本ハムなど、世代交代をうまく進めているチームと比べると、その違いは明らかでしょう。ベテランは切れない。若手も育たない。チグハグな方針はグラウンドの現場レベルにも見え隠れしています。
私はシーズン終盤、最下位に沈んで苦しむタイガースを見て、秘かに「チャンスだな」と思っていました。金本監督が続投したら楽しみだな、と考えていました。もう上がるしかないわけですから、次のシーズン、金本監督は思い切ったことができるわけです。チームとして大きく変わる「好機」だと見ていました。
今、金本監督はどういう気持ちでしょうか。
なるべく新しいタイガースに希望を持ちたいと思っています。ただ、どこか、金本前監督に後ろ髪を引かれるような再出発に、不安を覚えてしまうのです。