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阪神・矢野新監督誕生に潜む矛盾。
金本路線は継続か、断絶なのか。
posted2018/10/19 10:30
text by
藪恵壹Keiichi Yabu
photograph by
Kyodo News
タイガースは一体、どこに向かっているのでしょうか。
10月10日の甲子園最終戦翌日、金本知憲監督が電撃辞任してから、わずか4日で矢野燿大新監督が誕生しました。
「今シーズン、リーグ最下位となった金本監督に対し、電鉄本社が球団社長を通じて辞任を勧告し、後任にはウエスタン・リーグ優勝に導いた矢野二軍監督を内部昇格させた」
様々な報道や情報を総合すると、そういう経過だったのは間違いないでしょう。
ドラフトなど来季へ向けた編成作業を考えても時間がなかったと言われれば、そうなのかもしれません。でも、ここには矛盾が潜んでいるような気がしてなりません。
そもそも矢野新監督は、片岡篤史コーチとともに金本阪神の屋台骨を支えてきた人です。
3年前に金本監督、矢野作戦兼バッテリーコーチ、片岡打撃コーチが誕生し、この3人が「金本政権」の核だったのは間違いないでしょう。
本社、球団に確固たる方針は?
昨年のオフに掛布雅之二軍監督を退任させた影響で、今シーズンからは矢野コーチが二軍監督となりましたが、「育てながら勝つ」という金本監督の野球を実践するための重要なポジションだったからこそ、信頼のおける人に任せたということでしょう。
つまり、矢野二軍監督は普通に見れば、金本監督の「分身」のような存在だったはずなんです。
それなのに、金本監督を事実上、解任に近い形で辞任させておいて、新監督は金本野球の「核」を担っていた人へ任せる。これでは、なぜ、金本監督は辞任を勧告されなければならなかったのかがわかりません。
残り2年も契約を残した金本監督を切ってまで新しい道を進むべきだと考えたのか。金本路線を継続すべきだと考えたのか。本社や球団の確固たる方針が見えてこないのです。
矢野新監督が悪いというのでは全くありません。能力に疑いはないでしょうし、監督就任を依頼されれば、受けるのが野球人です。ましてや、志半ばだった金本監督の意志を引き継ぐという気持ちもあるでしょう。ただ、監督就任を要請した側の「なぜ矢野監督なのか」という明確な理由が見えてこないのです。