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棚橋弘至、再び奪われた新日本の主役。
新鋭スイッチブレイドとは何者か?
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2018/09/27 08:00
オカダとの戦いの構図には既視感が伴うが……スイッチブレイドがもたらす新しい展開に、棚橋はどう応える?
「オレは必ずオマエにリベンジする」
一方で、ホワイトはこんなことを言っていた。
「自分はどこにも行かないし、ここに残ってニュージャパンをいつか自分のものにしてみせる。それまで棚橋、オマエは体にせいぜい気をつけて再戦する時のことを考えて待っていてほしい。その時にもし、オマエの腰にベルトがなかったとしても、オレは必ずオマエにリベンジする」
一度は棚橋に敗れたホワイトだったが、停滞することはなかった。1月28日には札幌でケニー・オメガからUS王座を奪った。
「オレはあの時のことをはっきり覚えている。2015年1月の後楽園ホールだ。髪の毛を剃ってニュージャパンに入門した。その時、だれもオレのことなんて気に留めていなかっただろう。でもオレは、この団体のトップに立ってやると心に決めていた。その時はまだ、スイッチブレイドの姿は思い浮かんでいなかった。だが、こういうふうに変わったことで、US王者にたどり着いた」
ホワイトが身につけたずる賢さ。
棚橋が優勝したこの夏のG1クライマックスのブロック・リーグ戦では、ホワイトは棚橋に勝った。ホワイトはオカダにも勝った。新日本のトップが相次いで、ホワイトにやられたわけだ。
ホワイトが新日本の外で身に着けたものはずる賢さだろう。相手をイライラさせるような立ち振る舞いで、不意に仕掛けてくる。
「一瞬ですべてを変える」
ホワイトは、オカダが別れを告げた外道とも結束した。そして、彼らのユニットであるCHAOSはその名の通り混沌としてきた。
棚橋は悔しかったはずだ。
新日本のキャリアではわずか4年に満たないグリーンボーイにいいところを持っていかれてしまったからだ。
ホワイトには「順序を追って来い」と言いたかっただろうが、それも今となってはすで時遅しと言わざるを得ない言葉になった。すべては、棚橋が自分で蒔いた種のようなものだとも言える。
今の状況は棚橋が思い描いたプランとは違うかもしれないが――自分で蒔いた種は自分で刈り取るしかない。
棚橋は必然的に、「権利証」をかけてホワイトと戦うことになる。