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大坂なおみの無垢さは最高の武器。
「セリーナと抱き合ったら子供に」 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byGetty Images

posted2018/09/10 17:00

大坂なおみの無垢さは最高の武器。「セリーナと抱き合ったら子供に」<Number Web> photograph by Getty Images

セリーナ・ウィリアムズの言動が世界中で物議を醸しているが、大坂なおみにとっての憧れであることは何ら変わりない。

「この泥棒。私に謝りなさい」

 大坂に圧倒されるセリーナを、家族席に座るコーチ、パトリック・ムラトグルーは黙って見ていられなかった。第2セットの第2ゲーム、こっそりと身振りでセリーナに何かを伝えた。あとでわかったことには、「ネットに出ろ」という指示だったらしい。試合中のコーチングは選手が見ていようがいまいが、違反行為にあたる。〈警告〉がとられた。

 不満をあらわにしたセリーナだったが、違反行為は続く。セリーナがブレークに成功したあとの第5ゲーム、ダブルフォルト2つを絡めてブレークバックを許すと、ラケットを地面に叩き付けて破壊。2度目の警告はポイント剥奪となる。

 第6ゲームの1ポイント目は大坂に与えられ、怒りのおさまらないセリーナはプレーを立て直すこともできず、このゲームをラブゲームでキープした大坂が第7ゲームをブレーク。チェンジオーバーでセリーナは主審に対して、「この泥棒。私に謝りなさい。あなたは私のキャラクターを攻撃している」と威圧的に罵倒し続けた。

 このことで主審はゲーム・ペナルティ……つまり、次のゲームを戦わせずに大坂に与えたのだ。

ブーイングの嵐にも動じなかった。

 かなりレアなケースだが、ルールには則っている。しかし会場内はブーイングの嵐で騒然とし、セリーナはわめき散らし、トーナメント・レフェリーとグランドスラム・スーパーバイザーも登場する事態になった。

 もう1つの壁というのはもちろんこの騒動のことだ。百戦錬磨のプレーヤーですら動揺するだろう。しかし、大坂は動じなかった。

 第9ゲームはラブゲームでセリーナがキープしたが、5-4で迎えたサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップ、フォアの逆クロスのウィナーで1ポイント目を奪うと、30-15からサービスエースを叩き込み、マッチポイントでは時速184kmのサーブがセリーナのラケットを弾いた。

【次ページ】 セリーナにペコリと頭を下げて。

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#大坂なおみ
#セリーナ・ウィリアムズ

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