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清武弘嗣「正直、引退も考えた」
ケガの連鎖、救った父の言葉と妻。 

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小田尚史

小田尚史Hisashi Oda

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/09/11 11:00

清武弘嗣「正直、引退も考えた」ケガの連鎖、救った父の言葉と妻。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

ロシアW杯出場は逃したとはいえ、清武弘嗣は今もなお日本屈指のMFである。復調を果たせば代表復帰も遠くないはずだ。

100%でプレーできない怖さが。

 サッカー選手を辞める──それすら頭をよぎったというのだ。

「何回も心は折れました(苦笑)。肉離れは治らないケガではないけど、細かいのも入れたら10回以上はしている。正直『ここまでかな?』ということも考えました。大ケガではないんですけど、これだけケガを繰り返すと、100%でプレーできない怖さがあった……。

 正直、今年までかなと思って、父親にも相談しました。時期としては広島戦の後ですね。こんなケガばかり繰り返す選手は監督も使いづらいだろうし、何より一番(つらいの)は、100%で走れないこと。走るとすぐに筋肉が張る。サッカーを楽しめない。プロの世界、100%でできない状態で相手に勝てるわけがないので、その時期は自分自身の今後について、深く考えました」

父からの言葉で前向きな気持ちに。

 精神的にかなり追い詰められていたことを明かした清武だが、幼少期、厳しく指導され、サッカーのイロハを叩きこまれた父との会話の中で、前向きな気持ちを取り戻していったという。

「父から言われたのは『100%でやって、ケガをしたら仕方ないと思うしかない』ということでした。でも正直、僕は『またケガをして、何やっているんだ』と周りに思われるのがイヤで。もちろん、温かく見守ってくれる方もたくさんいますけど、いろんな感情を持つ人がいるのも当然だと思うので……。

 でも父は『何を言われても仕方ない。ケガを繰り返せば周りからの風当りも強くなるとは思うけど、(ケガを恐れて)80%や90%でやるより、100%でやってケガをしても仕方ないと思えるメンタルを持て』、『最終的にお前が決めることだから』とも言ってもらいました。僕には小さい子どもが2人いて、まだまだサッカーをやらないといけない。そういう気持ちにオヤジがさせてくれました」

 そういった過程を経ての復活だけに、前述した浦和戦後の「今はサッカーをしていて楽しい」という言葉の重みも増していく。

“家族の支え”という意味では、「嫁さんも、食事に気を遣ってくれています」とも話している。「ケガが続き、いろいろ話して、自分のコンディションとも相談しながら、バランスのよい食事を心がけてくれています。ありがたいですね」とサポートに感謝した。

【次ページ】 サポーターとの大切な20秒間。

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