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今季のトップリーグは一味違う!
ラグビーの魅力が詰まった開幕戦。
text by

大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2018/09/06 17:00

トップリーグ開幕戦で両チームが見せた激闘。W杯前のシーズンらしい最高の船出となった。
トヨタの主将がシンビンを受けて。
極限の攻防が続く。そして84分、ノットロールアウェイの反則を犯したトヨタの姫野和樹主将が、反則の繰り返しによるイエローカードでシンビン(10分間の退出処分)を受ける。
決着したのは89分だった。
左中間ゴール前のPKでスクラムを選択したサントリーの8人が、1人少なくなったトヨタの7人スクラムを押し込む。トヨタのスクラムは耐えきれず崩れる。ゴールラインを越えようとしたボールを、トヨタのSOライオネル・クロニエが横入りで蹴り出そうとした。
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その瞬間、戸田レフェリーはペナルティトライを宣告した。これでサントリーの逆転勝ちが決定した。昨年のルール変更により、ペナルティトライのときはコンバージョンが省略され、無条件で7点が与えられるのだ。
クロニエが横入りしなければ、ペナルティトライではなかったのか。戸田主審に聞いた。
「その前にスクラムが完全に崩れていたので、どちらにしてもペナルティトライでした」
決着がついたとき、スコアボードの電光時計は48分を過ぎていた。
クールな判断が吹き飛ぶ面白さ。
冷静に考えれば、トヨタには違う対策もあったかもしれない。スクラムをまっすぐ押させてトライさせればトライは左隅。まだ同点だ。難しいコンバージョンが外れる可能性もあっただろう。
だが、そんなクールな判断が吹き飛んでしまうのもラグビーの面白さだ。
攻める側はガムシャラに攻めたて、守る側も瞬間瞬間に全力を尽くす。もちろん、シーズンのファイナルになれば違う水準が、つまりよりシビアな判断が求められるだろうが、シーズンの始まりには時として、全力を出し切って自らの現在地を知ることが、目の前の1勝より尊いことがある。