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三木谷浩史が語る「イニエスタ獲得は、
社会構造改革の一環だ」
posted2018/09/03 07:00
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Takuya Sugiyama
「僕がここにいるのは彼のおかげなんだ」
イニエスタは、はっきりとこう言った。
欧州、中国、米国のクラブなど世界中から多くのオファーを受けたアンドレス・イニエスタは、一時は中国行きがほぼ決定とも言われた。しかしそんな競合を制し、彼を日本へと連れてきたのが楽天会長の三木谷浩史氏だ。
世界的人気を誇るスターのJリーグ入りは大ニュースとなり、「イニエスタ」、「ヴィッセル神戸」、「楽天」の3ワードは世界を駆け巡った。
スポーツ界で世界を舞台に仕掛け続ける三木谷氏は今なにを考えているのか。
イニエスタ獲得で成し遂げたいこと。投じた巨額の費用は採算が取れるのか。そして現在のスポーツ界をどう見て、なにを目論んでいるのか。
日本列島がイニエスタの衝撃に揺れていた8月中旬、遠くに東京の街を見渡すオフィスで大いに語ってもらった。(Number960号掲載記事の一部を特別抄録)
彼が来ると「サッカーが全く変わります」。
――まずはイニエスタ獲得の経緯と、彼の加入でどのような効果を感じられているのかをお聞かせください。
「最初は、そもそも彼がバルセロナから出るということ自体、私もあまり信じられませんでした。
スポーツダイレクターの三浦淳寛や吉田(孝行)監督に、『もし来たらどうなるだろう?』と聞くようなところから始まりました。
すると『サッカーが全く変わります』と。
イニエスタが来ることで、サッカーのスタイル、クオリティー、クラブの中のプロフェッショナリズムの徹底、栄養面の管理やコンディショニング、育成や練習方法などすべてにおいて影響があります、と。実際、彼の存在が非常にいい刺激になっている。
イニエスタはこれを『プロジェクト』と呼んでいます。
一過性に終わらせないために、我々はこのプロジェクトを成功させたい。“イニエスタが来て数年間クラブにいて、去っていきました”ということではなく、彼が来たことによって根本的にクラブのあり方が変わっていくようなプロジェクトです。
これはヴィッセルだけではなく、Jリーグ全体に波及していくと思っています」