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村田諒太は王者から“最強”へ。
WBA2位を「ノックアウトできる」。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2018/08/31 19:15

村田諒太は王者から“最強”へ。WBA2位を「ノックアウトできる」。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

ミドル級最強の肩書きは現在、ゴロフキンのものである。村田諒太はその座を虎視眈々と狙っている。

村田「ノックアウトできると思っています」

 結果も、内容も。

 本場ラスベガスでその2つを成し遂げなければゴロフキンを振り向かせることはできない。無論、村田も承知している。

「(ブラントは)非常に攻防まとまっていて、KO率も高い。何よりWBAの指名挑戦者ということで、高い評価を得ている。クリアすることで次につながると思っています」

 村田と言えば、強いプレッシャー、強固なブロック、強打の右。その「3強」をベースに置いて、相手を引き込んでいかなければならない。

「プレッシャーを掛けたら、相手はクリンチに来るでしょう。そのときに相手を休ませないぐらいの近い距離でもしっかりとしたパンチを打ちたい。そのことが1つのテーマ。それができればなかなかクリンチに来れなくなって、プレッシャーももっと掛けていける。結果、ノックアウトできると思っています。

 指名試合ということが一番のモチベーションです。クリアしたら、誰とやりたいとか言える権利が生まれてくる。いいカタチでクリアして、その次につなげていきたい」

 ノックアウト、誰と戦いたいか言える権利……村田の口からは威勢のいい言葉がポンポンと飛び出していく。

 それは自信というよりも、むしろ彼の使命感、責任感がそう言わせているように感じる。

自分だけでなく、4回戦ボクサーのためにも。

 スポーツチャンネル「DAZN(ダゾーン)」がこのブラントとの防衛戦を日本において独占ライブ中継を行なうことも発表されている。彼は表情を引き締めてこう語った。

「(DAZNは)Jリーグでも多大な支援をされていると思います。そういったお金の動きがボクシング界にもあれば、今4回戦(ボクサー)だったり、6回戦だったり、日本チャンピオンというレベルでも、生活が苦しい選手は多いと思うので、今後充実していくような一歩になれば、僕の試合がその一歩となればいいと思っています」

 ボクシングを人気コンテンツに引き上げることでプロボクサーの収入が増えていくきっかけになるかもしれない。己のためのみならず、日本ボクシング界全体のことを考えて彼はゴロフキンを追っている。

 そのゴロフキンは9月15日、ラスベガスで元2階級制覇王者の人気者サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)と再戦を行なう。昨年9月の対戦はドローに終わっており、完全決着の一戦となる。

 ミドル級世界戦線、秋の陣が始まろうとしている。

 最強を目指す村田の戦いは、正念場を迎える。

「自分の拳で、道を切り拓いていこうという気持ちは強いです」

 ラスベガスを熱狂させ、勝ち名乗りを挙げる、その覚悟。

 マイクを持つ村田諒太はそのゴツい拳を、グッと握り絞めていた――。

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ゲンナジー・ゴロフキン

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