プレミアリーグの時間BACK NUMBER
唯一無二の人、アブラモビッチは
愛するチェルシーを売却するのか?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/09/01 11:00
ジョン・テリー(左)とタイトル獲得を喜び合った頃のアブラモビッチオーナー。名物オーナーがチェルシーを去る日が来るのだろうか。
メディアもネタが1つ減るとなると。
アブラモビッチによる買収の前シーズン、プレミア4位だったチェルシーの1つ上の順位にはニューカッスルがいた。2部降格も経験した古豪だが、現在ラファエル・ベニテスが指揮を執る一方で、“シブチン”の英国人オーナーに対するファンの不満が絶えない。
一方アブラモビッチは、ベニテスを短期の暫定監督として雇い、後任に再びモウリーニョを呼び寄せた実績と資金力の持ち主である。
アーセン・ベンゲル体制が長く続きすぎた感のあるアーセナルでは、ロンドン市内のライバルで「帝政」を敷くロシア人オーナーによる情け無用の監督人事を、密かに羨ましく思っていたファンもいるだろう。
そのアーセナルのアメリカ人筆頭株主をはじめ、昨今のプレミアでは外国人オーナーがホームゲームにも姿を見せないことが多々ある。その点、ビザ更新問題に直面するまでのアブラモビッチは、世界で2番目に大きなクルーザー『エクリプス』で洋上テレビ観戦している時以外は、スタンフォード・ブリッジに姿を現してきた。
ビッグゲームでの勝利や、不甲斐ない敗戦が決まった瞬間には、役員席で微笑みや憂鬱な表情を浮かべる姿をテレビカメラが捉えるのが常だった。本当にチェルシーを去るとなれば、国内メディアもネタが1つ減ると惜しむに違いない。
買い手を探す上でもトップ4復帰を。
マンCやパリSGのように、欧州サッカー界では中東の莫大な資金力を背景に戦うクラブが勢力を見せ始めている。その中で遅かれ早かれ「スーパーリッチ」と呼ばれてもアブラモビッチがクラブを手放すときが訪れる。今季チェルシーは暫定監督を含めれば過去15年間で13人目の指揮官となるマウリツィオ・サッリの下、開幕3連勝で9月を迎えた。攻撃的スタイルでトップ4復帰を果たせれば、買い手を探す上でも好都合だ。
そこで新オーナーが見つかれば、近い将来に新スタンフォード・ブリッジも現実の物となる。完成の暁には、その時点で現オーナーが手を引いていようがいまいが、是非ともスタンドの1つを「ロマン・アブラモビッチ・スタンド」と名付けてもらいたい。