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ラウール、バルデスが育成指導者に。
いつか監督として再び大舞台へ。
posted2018/08/31 11:15
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
8月は始まりの月だ。
1部から3部までの全国リーグで戦うチームは新シーズンに臨み、地域リーグや年代別カテゴリーに属するチームは9月の開幕に向けて本格的に始動する。
選手のなかにはチームを変えて新しいサッカーを始める者もいるし、新しいキャリアをスタートさせるスタッフやコーチもいる。
8月下旬、マドリード市内で行われた育成年代の大会では、元R・マドリーのラウールと元バルセロナのビクトル・バルデスが監督デビューを果たした。
スペインサッカー協会内の一機関である国立指導者学校には年間予定には入らない特別コースがある。
講義と実習の修了に通常205時間を要するUEFA“B”ライセンス(1部所属クラブのBチームと2部所属クラブの指導が可能)と、同様に475時間を要するUEFA“A”ライセンス(16歳までのユースチームおよび地域リーグ所属クラブの指導が可能)を、6週間の240時間でまとめて取得するためのものだ。
人々が驚いたバルデスの監督志望。
対象は「1部リーグでプレーした期間が8シーズン以上あるいは出場試合数が150以上」「代表招集5回以上」「EUROで優勝」「W杯で優勝」「五輪で優勝」のいずれかを満たす元選手で、開講は希望者が7人以上集まったときのみとされている。
ラウールとバルデスはその“希望者”に名を連ね、今年の4月18日から実施された同コースに他の14名と一緒に参加して、くだんのライセンスを取得した。
昨季R・マドリーに戻り、ペレス会長の側近となってジダンと同じ道を歩み始めたラウールにとっては然るべきステップといえよう。
一方、バルデスの監督志望は多くの人を驚かせた。
3年前、夫人の母国コロンビアのテレビ番組の取材を受けた際、次のように語り、話題となったからだ。
「(ビッグクラブの)サッカー選手は一から十まで御膳立てされる非現実的な世界で生きている。でも俺は膝に重傷を負ったおかげで普通の生活に戻ることができた。数年ぶりに小銭を触り、自分でコーヒー代を払って……。名声は要らない。有名でいたくない。いつか灯りが消えるときがきたら、その後は誰にも見つけられたくない」