“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
本田圭佑のビジネスの原点は能登?
星稜・河崎監督が尽力した大会とは。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/26 08:00
今年も開催された「石川県ユースサッカーフェスティバル」。星稜・河崎護監督の尽力が、大会の大規模化に直結した。
当時から圭佑は見ててくれた。
クラブ経営だけに留まらず、本田は世界的な俳優であるウィル・スミスとともに「ドリーマーズ・ファンド」を設立した。さらにカンボジア代表の実質監督に就任するなど、次々と想い描いたことを実現させている。
「思ったこと、考えたことをすぐに行動する。それには当然、スピード感を持ってやらないといけないし、同時に緻密さがないといけない。それを実現するには自分だけの力ではなく、人と地域とのつながりが大事になってくるんです。その活用ぶりがマネジメント力なのだと思いますし、圭佑にはそれがある。
今思うと、当時から圭佑は(自らの取り組みを)見ていてくれたのかなと思いますし、今は私が刺激を受けている。すごく大きな存在ですね」
当然、本田もこのフェスティバルに参加した1人なのだ。当時の思い出について、本田自身はこう語っている。
「石川に全国から沢山の強豪チームが来る――考えてみたらこれって凄いことなんですよね。それに朝、ランニングするときにいつも加賀屋(和倉温泉最大の高級旅館)の前を走っていたんですが、その壮大な建物を見上げて“俺もいつかここに泊まりたいな”ってずっと思っていましたから」
実際、本田のサッカースクール設立活動では、その初期に和倉温泉でスクールを開設しており、和倉は単なる“高校時代の思い出”だけでなく、現在の経済活動にもつながる土地にもなっているのだ。
サッカーグラウンドを100面に!
そして今後、本田のような選手が訪れてくれることが地域活性化にもつながるはず、と河崎は語ってくれた。
「現在、石川県内にはサッカーができる人工芝・天然芝グラウンドが45面ほどあります。これを100面にしたい。フェスティバルはこのまま続けていきますが、すべてのカテゴリーのチームが合宿できる環境を整えていきたい。旅館の目の前にグラウンドがあって、複数のチームとマッチメークできる――そういう施設やコミュニティーをもっと作りたい。
石川には和倉だけでなく加賀、山代、山中、片山津、粟津、志賀の郷、辰口、輪島……と温泉地がたくさんあります。そこを活用していくことで、サッカーの強化はもちろん、もっと石川県に来てくれる人を増やしたいですね」
本田に劣らず河崎の夢もまた壮大なのだが、これまでの河崎の活動が有言実行なのも間違いない。そんな河崎の下で学んだ3年間こそが……もしかすると今の本田圭佑の活動の元となったのではないか。
真夏の石川県で、河崎護という「高校サッカー部の監督」の枠を超えた、大きな人間の存在を改めて感じることとなった。