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おかえりなさい、棚橋弘至――。
“G1史上最長の死闘”を徹底検証!
posted2018/08/16 19:00
text by
行成薫Kaoru Yukinari
photograph by
Essei Hara
8.12日本武道館。G1 CLIMAX28・決勝戦、棚橋弘至vs.飯伏幸太。
G1の最中、8月9日にプロレスを題材とする『ストロング・スタイル』という小説を上梓した縁もあって、今回、筆者はこの大一番のレビューを書かせていただく機会を得た。新日の試合は、1.4の東京ドーム以来、久しぶりの現地観戦である。
メインイベント。会場のボルテージが一気に上がる。大入り札止め、約1万2000人の観客がまずどよめいたのは、各々が連れてきたセコンドの姿がモニターに映し出された瞬間だ。
飯伏のセコンドには、前日に優勝決定戦を懸けて戦ったケニー・オメガ。
そして、棚橋をリングに迎え入れたのは、急性硬膜下血腫により長期欠場を余儀なくされている柴田勝頼だ。
2人のセコンドの存在が、この一戦が「特別な試合」であることを観客に知らしめる。
試合予想は「今日はたぶん飯伏」。
試合開始のゴングが鳴る。グラウンドの攻防から始まる静かな立ち上がり。筆者の周囲からは、「棚橋に頑張ってほしいけど、今日はたぶん飯伏」という声が聞こえた。
前日に行われた飯伏幸太とケニー・オメガによるBブロック最終戦は、傑出した身体能力を誇る2人の異次元の試合となった。完成されつつある、飯伏のレスラーとしての円熟味。まるで筋肉の鎧をまとったかのような体は、コンディションの良さを物語っていた。
対する棚橋は、近年、相次ぐ故障で本来の力を出せていない。
ケガがなくとも、年齢的な体力の衰え、長年エースとして激闘をこなしてきた中で蓄積したダメージもあるに違いない。Aブロックを7勝1敗1分という成績で突破した棚橋だが、数字ほど他を圧倒したわけではない。故障した右膝を責め立てられ、時にはプライドをかなぐり捨て、ダーティーな技や丸め込みで勝ち点をもぎ取った。勝った全試合が辛勝。勢い、コンディションという面では、明らかに棚橋に分が悪い。今日はたぶん飯伏。そう思ったファンは少なくなかっただろう。