来た、見た、書いたBACK NUMBER
ガンバのクルピ解任は「人災」。
再建チャンスの中断期間をフイに。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/07/28 08:00
宮本恒靖新監督の就任で何かを変えたいガンバ大阪だが、クルピ前監督の解任までの経緯は看過できない。
柿谷獲りの発想自体がどうなのか。
一時は合意寸前にまで至ったというものの、結果的に「禁断の移籍」は成立せず、宇佐美貴史との交渉にも失敗。「監督を変えるか、選手を変えるかしかない」とまで言い切り、補強を求めていたブラジル人指揮官のリクエストは最後まで叶わないままだった。
もっとも、柿谷に白羽の矢を立てた梶居強化アカデミー部長のチョイスとパイプの少なさには首をかしげざるを得ない。ちなみにクルピ監督は柿谷の獲得失敗後に、淡々と語っている。
「曜一朗の質の高さは分かっているが、私にとっては補強のファーストチョイスではなかった。1番目にリクエストしているのはサイドを打開できるFW」
スター性と抜群の個を持つ柿谷の能力に疑いの余地はないが、残留争いの渦中にあるガンバ大阪が、不倶戴天の敵の看板選手にすがろうという発想自体が、サポーター心理を理解していないと言わざるを得ないだろう。
仮にレアル・マドリーが降格の危機に瀕している際、バルセロナの生え抜きを獲得しようとすれば、マドリディスタは納得するのであろうか。そして逆もまた、しかりである。
指揮官は始動初日にオフを満喫。
「もし誰も補強が来なかったら、自分の妻を呼ぶよ。彼女はいつも運を持ってくるからね」と半ば自嘲気味なジョークを口にしていたクルピ監督だが、中断期間中に指揮官自身がチーム内で求心力を落としていたのも事実である。
ルヴァンカップのプレーオフステージで勝利した後、チームは8日間のオフに突入。再始動するはずだった6月18日は、大阪府北部地震の影響で、始動初日の練習が急遽中止されるアクシデントに見舞われた。
ところが、指揮官はまだ母国でオフを満喫中。始動初日に姿を見せない有り様に、ある主力は「チームのこの現状であり得ないでしょ。それを許しているクラブもダメ」と呆れ気味だった。
他クラブが補強を行ったり、キャンプで汗を流したりしている中、ガンバ大阪はクラブ練習場で紅白戦主体の練習に終始していた。雨中の練習を好まないクルピ監督の意向もあってか、練習が短時間で終わるなどおよそ16位のチームとは思えない漫然とした中断期間中の象徴は、広島との再開初戦を1週間後に控えた7月11日の練習試合である。