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阪神から西武へのトレードで激変!
榎田大樹はなぜ輝きを取り戻せた?
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/07/26 10:00
勝利投手となって辻監督と握手する榎田。阪神時代の昨季はわずか3試合の登板にとどまったが、新天地でのプロ8年目で見事に復活。
プレーに出る心遣いと生真面目さ。
後半戦を迎え、いま心掛けていることは「登板日に向けていかにベストな状態に持って行くか」。
オールスター休みの間には遠投でフォームや体の使い方をチェックし、登板日と登板日の間は細かい修正を試みる。ブルペンに入るのは登板日の前々日、一度。気になることがあれば、投球数を増やし納得するまで練習する。
「納得がいかないときにはいろいろな練習を取り入れています。僕はよく横で投げたりしますね。ひじを下げるというイメージではなくて、体全体を下げるイメージです。僕は上からたたくようなフォームでは投げないので、横の移動をしっかりと意識したい。そこで、あえてサイドスローで投げてイメージを強く持ちたいと思って……」
体重移動も気に掛ける。
「左の軸足にしっかりと体重を乗せるように、投げる前に一回、左足でマウンドをポンと踏んでから投げます。体重を乗せるイメージを作るのが目的です。調子が悪いとどうしても、体が打者の方向に突っ込んでしまうので、投げにいくときに左足を意識しようと」
取材している者にもわかりやすいようにと、歩く足を止めて、実際に左足に体重を乗せる動作を眼の前で繰り返してくれた。
そんな心遣いや生真面目さは、榎田のピッチングだけではなく、守備にも表れている。
「若いピッチャーはぜひお手本に」
開幕直後、辻監督が「若いピッチャーはぜひお手本にしてほしい」とたたえたフィールディングの巧さは、榎田の大きな強みのひとつだ。
「いや、でも阪神時代は周りに巧い人がたくさんいたので、自分は普通ですよ」
本人は謙遜するが、バント処理や一塁へのカバーリングの速さ、送球の確実性などは、ライオンズ投手陣の中で頭ひとつ秀でている。
「中学、高校とすべてのステージで、守備のことを厳しく指導してくれる指導者はいました。そういう環境で野球をしてきたので、守備に関してもしっかりやろうという意識にはなったんだと思います」