プロ野球亭日乗BACK NUMBER
不祥事の連鎖が止まらぬ球界。
今こそコミッショナーの出番だ!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/07/13 11:00
昨年11月、新コミッショナーに就任し、熊崎前コミッショナー(右)らと握手する斉藤氏。
「球界の番人」なのに発信が少ない。
ただ、こうした事件が起こるたびにクローズアップされるのは、プロ野球という世界の特殊性だった。もちろんプロ野球の世界は、成功すれば億の年俸を稼ぎ、高級外車を乗り回す憧れの世界である。また高校を卒業したばかりの二軍の選手でも、契約時には数千万円の契約金を手にするなど、一般社会の常識からは尋常でない世界であることも確かだ。
だからこそ選手自身に求められる規範意識は大事だし、それを教育していく球団や球界全体のシステムも必要になる。
一連の不祥事の“主役”となった巨人は、賭博事件を契機に規律委員会を設置して、キャンプ等での指導なども行なってきたが、結果的には不祥事の防止にはなかなか結びつかなかった。
と、同時に一連の不祥事の中でもう一つ感じるのは球界全体としての取り組みの不足。特に昨年就任した斉藤惇コミッショナーの「球界の番人」としての発信の少なさに対する失望感である。
反社会的な行動にお茶を濁した対応。
以前にナンバー本誌のコラムで、開幕直後にマツダスタジアムで中日ファンが発した「原爆落ちろ」というヤジに対するNPBの対応への疑義を書いた。
ああいう差別的、反社会的な行動に対して、球界は断固たる姿勢を示さなければならない。もしJリーグなどでそういう問題が起これば、最高責任者であるチェアマンが差別的、反社会的行為を絶対に許さないという宣言を出して、リーグとしての姿勢を明確に示すはずだ。
ところがNPBは表立ってそういう問題に取り組まずに、当該球団が場内放送などで、球場内でのそうした応援の禁止などを放送した程度でお茶を濁しただけ。コミッショナーが断固たる姿勢を示すこともなかった。
斉藤コミッショナーは野村證券出身で、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツから転身してきた経済通である。これまでは前任の熊崎勝彦コミッショナーが最高検出身だったように、法曹界や官僚経験者が多かったコミッショナーの経歴からは異色の存在である。NPBの事業展開などに手腕を発揮してもらおう、という狙いの就任であったことは間違いない。