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初手術の“悲劇”を経たライアン小川。
月間MVPを獲るまでの葛藤と練習。

posted2018/07/14 08:00

 
初手術の“悲劇”を経たライアン小川。月間MVPを獲るまでの葛藤と練習。<Number Web> photograph by Kyodo News

6月のセ・リーグ月間MVPは小川と青木宣親。交流戦首位で好調だったヤクルトを表すような人選だった。

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浜本卓也(日刊スポーツ)

浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto

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 7月7日。多くの人が「七夕」を連想することだろう。織姫と彦星が天の川で年に1度の逢瀬をする。人々は願いごとを記した短冊を、ササの葉に託して夜空を見上げる――。

 そんなロマンチックな響きが漂う記念日に、苦い記憶をよみがえらせる投手がいた。七夕2日前の5日、ヤクルト小川泰弘投手は七夕の話題を振られると「七夕?」と、首をかしげた。足を止めて「うーん……」と低くうなった。しばしの沈黙後、微笑交じりに口を開いた。

「七夕といえば……七夕の“悲劇”ですね。あれは忘れないでしょう」

 ちょうど1年前の、七夕の夜だった。広島相手に8-3と5点リードで迎えた9回、小川は“抑え”として初めてマウンドに上がった。低迷するチームの打開策としてリリーフに転向して2戦目。“守護神ライアン”は、当時の真中監督の巻き返しへの勝負手だった。

七夕の夜に食らった悪夢のような6失点。

 チームの願望は、七夕の夜に散った。先頭バティスタに左中間席へ特大アーチを描かれると、1死からは菊池にもソロ本塁打。丸が四球で歩くと、2死一塁から松山に適時二塁打。西川にも内野安打を許すと、神宮は異様な盛り上がりにつつまれた。2死一、三塁。代打新井にバックスクリーン直撃の逆転3ランを食らった。悪夢のような6失点。神宮の上に広がる漆黒の夜空を、小川はぼうぜんと見上げるしかなかった。

 8日後、先発への再転向が決定。守護神ライアンで勝ちパターンを構築する――。そんなチームの“願い”はかなうことなく、96敗の最下位で2017年シーズンを終えた。

 苦い記憶を払拭する機会が、1年後に訪れた。今年の7月7日、小川が先発として七夕のマウンドに上がることになった。もちろん、本人も自覚していた。

「また七夕です。不思議な巡り合わせですよね」

【次ページ】 人生初の手術によるフラストレーション。

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