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3時間待たされ停電中止、翌日先発。
マエケンはツイてなくても前向き。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2018/06/23 11:30
3時間も待たされての試合中止。それでも前田健太は翌日の先発で最低限の役割を果たした。
「結構難しい登板ではあったけど」
「(良い感覚が)来そうな気配はまったくなかった。いろいろ探りながらやりましたけど、仕方ないなっていう感じ。四球を5つも出したんで、相当フラストレーションが溜る。四球は打たれる以前の、自分の問題。しっくりいってないのがそのまま出てしまった」
2回二死満塁から1番クリス・ブライアントに打たれた左翼線への2点適時二塁打は、外を狙ったスライダーが内角高めに抜けた球を打たれた。
決していい当たりではなかったが、本来は中軸を打つ能力を持つブライアントの上→下→上と弧を描くスイングの軌道に引っ掛かったような感じだった。3失点目は4回二死から安打と四球で走者を残した状況で降板し、後を受けた中継ぎが適時打を打たれて許したものだった。
ボコボコにされるような、ひどい登板だったわけではない。だが、前田には「満足」という言葉はなかった。
「結構難しい登板ではあったけど、相手も一緒だし、それは関係ないのかなと思う。DLから帰って来てからの2登板は自分の中でしっくり来てないし、もう一度いい形に戻せるようにしたいなと思う。簡単ではないと思いますけど、しっかりしたい」
諦念に似た気持ちがありながら切り替え。
簡単ではない。それが彼の希望だ。「ない」という語尾には否定的な響きもあるが、一流の投手というのは昨日よりも今日、今日よりも明日を見据え、常に前進しようとする。そのためには“考える”ことが必要不可欠で、課題を見つけ出すことが推進力となる。悪条件での試合は、彼の今抱えている課題をむき出しにした。
前田はきっと、投球内容について諦念に似た気持ちを持ちながらも、「次に行くか」と心を切り替えていたのだと思う。
「次の4、5日でしっかりやらないといけない。もう少し早めに……今までは勝手に(感覚が)戻って来るかなと思ってたけど、自分の中で早急にやりたいなという感じがある」
ダルビッシュ有、前田健太、大谷翔平、田中将大といった日本人メジャーリーガーが次々とDLに入った。“日本人”という括りでメジャーリーグを見れば、今ひとつ明るくない状況である。
だが、もっとも早く戦列に復帰した前田が見せてくれたのは、そんな厳しい世界で生き残るための「希望」だと思う。