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3時間待たされ停電中止、翌日先発。
マエケンはツイてなくても前向き。
posted2018/06/23 11:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
いい事ばかりはありゃしない――。
昔、そんな歌が好きだった。さえない自分を励ましていたのか。苦い思いを不運のせいにしていたのか。自嘲することで「人生なんて、こんなもんさ」と納得していたのか。諦めているようで、諦めていたわけではない。こんな日もある。今までだって同じじゃないか。いい事ばかりはありゃしないけど、そんなに悪いことばかり続くわけもない――。
ロサンゼルス・ドジャースの前田健太を取材していて、そんな歌を思い出した。
6月19日に行われた敵地での対シカゴ・カブス戦。4回途中3失点で降板した前田は、「今日はもうどうしようもない感じで、ひどかった」と言った。その表情に徒労感が滲んでいたわけでも、後悔の念があったわけでもない。すでに心の整理を済ませ、ただ正直に今の自分を伝えようとしていた。
「コントロールもそうですけど、投げている感覚とかフォームとか、いろいろ上手くいってないことがある……ただ、自分の中で何をすれば良くなるという感覚だったり、課題だったりっていうのは分かっているので、しっかり次の登板までに修正していきたい」
前日のナイターで登板するはずが。
日本のプロ野球で何年もチームの柱として活躍した選手たち。その多くは、冷静な受け答えができるものだ。
「DL(故障者リスト)に入って、まだ痛みがあるとかではないんですけど、どうしてもかばうフォームというのが自分に染みついてますし、それを取り除かないといけない。DLに入る前の投球フォームだったり、感覚だったりに戻していかないといけない」
この試合、ひとことで言えば、ちょっとツイてないものだった。
本来なら前田は、前日のナイトゲームで登板する予定だった。試合開始は午後7時5分。ところが天気予報は「雷雨」で開始時間が遅延となり、内野には防水シートが被せられた。ドーム球場が少ないメジャーリーグでは、グランドクルーが観測レーダーで雲の動きを見ながら天気を予測し、両チームと話し合って試合の遅延を決める。
10分、20分、30分……いつまで経っても試合が始まらない。それどころか予報にあった雷雨すら降らなかった。