猛牛のささやきBACK NUMBER
松坂大輔を小学校からずっと追う男。
小谷野栄一「1年でも長く対決を」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/06/15 08:00
5月30日のセ・パ交流戦の対中日で13年ぶりに松坂と対決。'05年の1度目の対戦では2打数無安打1四球だった。
まだ松坂からヒットを放っていない。
1回の第1打席はファーストライナーに倒れ、小谷野は苦笑い。4回の第2打席は四球で出塁し、マウンドの松坂は一瞬悔しそうな表情を浮かべた。そしてこの日最後の対決となった6回の第3打席は、141キロの外角のストレートに手を出せず、見逃し三振に終わった。
その3打席は、互いの紆余曲折を感じ取る時間だった。小谷野は感慨深げに語る。
「ああやってピッチングスタイルを変えて……だから今またローテーションを守ってチームに貢献しているんだな、と感じました。長くやるには変化し続けることが必要で、僕自身も、自己犠牲みたいなことをやるようになったから、この歳までやれているんだと思う。
でも変わることって難しいし勇気がいることで、マツほど実績がある選手はなおさらだと思う。でも彼みたいな選手でもそういうことをしてきたんだなと実感できたし、この歳になっても成長しようとしている姿を見て、すごく勉強になりましたね」
プロ入り後、小谷野はまだ松坂からヒットを放っていない。
「打てなくてすごく悔しかったですけど、打てなかったからこそ、この先も1年でも長くあいつと対決したいと思いました。また来年も契約してもらえるように、しっかりやらないと」
もう30年近く、一番長く松坂を追い続けてきた男は、まだまだその歩を止めない。