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西武・金子侑司はきっかけを探す。
「打つ自分をイメージできなかった」
posted2018/06/14 08:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
「今年はもうお立ち台に立てないんじゃないかと思っていましたよ」
試合後、記者に囲まれた金子侑司は安堵したような笑顔で言った。6月3日の阪神タイガース戦で2安打2打点と活躍し、ヒーローインタビューを受けたあとのことである。
一昨年のパ・リーグ盗塁王。昨年は左足の故障で出遅れたものの、5月以降はレギュラーとしてシーズン90試合に出場した金子だったが、今年は開幕から極度の不振に陥った。
金子は振り返る。
「とにかく、ヒットを打つ自分を全然イメージできないくらいダメでしたね。開幕直後にあれだけ打てなかったのはプロに入って初めてだったので、焦りました。4月は試合に出ている選手、全員が打っていたので……」
3月、4月と好調だったライオンズ打線には、ずらりと3割バッターが並んだ。そのオーダーのいちばん最後、金子の打率だけが1割台という異様な光景が続いた。ライオンズ打線が打ちまくり連勝を続ける中、1人だけ取り残されたような感覚を味わったのではないだろうか。
誰とも目が合わないよう視線を足元に落としたまま、無言でロッカールームに消える日もあった。
右と左で打率には2割近い差が。
特に昨年までと違うのが、スイッチヒッターである金子の左打席と右打席の打率の違いだ。昨シーズンまでは、わずかではあるが左打席の率のほうが高かった。しかし今シーズンは左打席が1割8分6厘であるのに対し右打席は3割4分8厘と、2割近い差がついている。
左が118、右は23と打席数には大きな差があるものの、5月26日の北海道日本ハム戦で放った8回同点本塁打のように、勝負強さを発揮するのも右打席が多い。余計にその差が大きく見えてしまう要因になっている(数字はいずれも6月10日現在)。
「ここまで左で打てないというのは全く予測していませんでした。開幕するまでは特に左がうまくいかないとか、そんなことはなかったんですけど、急に何かが狂ってしまった感じです。
同じスイッチヒッターの松井稼頭央さんが気にかけて、いろいろ話をしてくれたり、もちろんバッティングコーチや辻監督も気にかけてくださって『ここをもっとこうしたら』という具体的な指導もしていただくんですけど、なかなか状態が上がってきませんでした。コーチも僕のことを考えてくださって押し付けはしないので、こればかりは自分で考えて乗り越えないとだめだと思っています。自分でなんとかしないと、この世界は誰も助けてくれませんから」
左打席の状態については、まだ課題を克服中だと言う。