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ウイイレ的に見た世界の最強国は?
「選手パラメータのつけ方は……」
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byIssei Hiramatsu
posted2018/06/14 17:50
ウイイレシリーズの制作を手がける田谷淳一さん。実はオープニング映像には彼が実際に操作したプレーも入っているほどの強者。
エジルが「もうちょっとスピードを……」。
――それだけの規模で“リアルな世界”のデータを集約しているわけですから、それ自体にかなりの価値がありますよね。
「そう自負しています。あるクラブから、スカウティングの材料に使いたいというオファーをいただいたこともありました。
ご存知のとおり、近年はサッカーそのものが進化していて、私たちはゲームの世界でそれを表現するために、単純な能力値だけでなく、チーム戦術や選手の“個性”を反映させようとしています。だからこそ、必要なデータも膨大になる。パラメータの項目も増えています」
――それを1年に一度のペースで新作を発売するたびに更新している……。
「だからこそ、すごく慎重でシビアな作業です。例えば、今シーズンものすごい活躍をしたからと言って、この先、右肩上がりで成長するとは限らないですよね。
ユーザーさんからも『今、この選手の能力はこんなもんじゃない!』という声をいただくこともあるのですが、そこは慎重に。逆もしかりです。今シーズンがダメだったからと言って、急に能力を下げるのは不自然。あくまでリアルなものを目指しています」
――ちなみに、選手本人からクレームが入ることは?(笑)
「『ウイイレ』のアンバサダーを務めていただいたドイツ代表のメスト・エジル選手は、冗談ぽく『もうちょっとスピードを上げてくれないと、パスをもらった時にDFを振り切れない』とSNSでつぶやいてくれました(笑)。そういう声は、制作チームとしては嬉しかったりします」
――パラメータ設定で意見が割れることもあるのでは?
「もちろんあります。制作チームにもそれぞれ応援しているチームや選手がいて、『俺はこう思う!』と強く主張する人もいるのですが、それはチーム内の円滑なコミュニケーションで解決します(笑)。ちなみに、まさに今、8月末に発売する次回作の最終パラメータ調整をやっているところです。
昨日の会議で話題になったのは、セネガル代表のサディオ・マネ選手です。今シーズンを素晴らしい成績で終えたリバプールのサイド攻撃を牽引しましたよね。
レビュアーが付けてきたパラメータでは、今年の活躍ぶりが反映されて全般的に上がっていたんですが、ときおり見せるトリッキーな部分がちょっと足りていないかな、という感じだったんです。
それを見た社内の熱狂的なリバプールファンから、『このスキルが足りないです!』と追加希望が送られてきました。
もちろん彼の言うことをすべて鵜呑みにするわけではないですが、データや他のスタッフの意見、映像なども確認した上で、いくつかのスキルを追加しました。そうしてコンピュータ同士の試合を見てみると、やはり本人らしいプレイの頻度が上がるんですよね」
――田谷さん、めちゃくちゃ楽しそうに話しますね(笑)。
「世界中のユーザーさんが目にするものなのでプレッシャーはありますが、正直楽しいですね(笑)」