炎の一筆入魂BACK NUMBER
一軍マウンド復帰までの743日間。
ついに蘇った広島・永川勝浩の意地。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2018/06/08 16:30
プロ16年目。昨季限りで江草仁貴、梵英心が退団したことでチームで唯一の「松坂世代」になった。
今季3度目の登板まで、中13日も空いた。
2三振を含む3者凡退。最速147kmを計測した。大きな1歩を踏み出したかに思えたが、一軍への道がひらけたわけではなかった。
その後3カード続いた遠征には一度も呼ばれず、強化指定の高卒1年目の投手やけが人がいる三軍とともに、大野練習場で調整しなければいけなかった。
4月26日の今季2度目の登板から3度目のマウンドは、登板間隔が中13日に空いた5月10日だった。
19歳、21歳の若手が積極登用されている現実。
ADVERTISEMENT
世代交代の波は、ベテランには厳しい。
今年12月で38歳となる。広島にはもう1人しかいない、松坂世代。
日本人投手陣で2番目に年長の福井との間には8歳もの差がある。チームは世代交代が進み、今季は開幕一軍入りした19歳のアドゥワ誠に代表されるように、高橋昂也(19歳)や藤井皓哉(21歳)など若手の積極登用が目立つ。
それはプロの世界では常であり、永川も覚悟はしていた。だからこそ、「結果を残すしかない」。
あらがうしかなかった。
二軍で9試合に登板し、防御率1.00。
力強い投球を取り戻し、一軍昇格を勝ち取った。
経験あるベテランには、交流戦防御率が6点台と危機的状況にあった広島投手陣を支える役割、勝ちパターンの中継ぎ陣をサポートする役割が任せられると思われたが、違った。
序列は最後列。敗戦処理からのスタートだった。状況によっては登板機会が訪れないまま二軍降格という憂き目にあう可能性すらあった。