炎の一筆入魂BACK NUMBER
一軍マウンド復帰までの743日間。
ついに蘇った広島・永川勝浩の意地。
posted2018/06/08 16:30
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
NIKKAN SPORTS
まだ4点のビハインドがある9回。マツダスタジアムは大きな拍手に包まれた。マウンドをゆっくりと降りる背番号20、永川勝浩に向けられたものだった。
かつて守護神を務めた37歳に与えられたマウンドは、4点をリードされた終盤8回だった。
イニングをまたぎ、9回のマウンドにも上がった。
2回2安打無四球2三振。単打と長打を1本ずつ浴び、走者も背負った。3ボールとなる場面もあった。それでも得点を与えない。743日ぶりとなるプロ505試合目のマウンドで投じた30球に、時の流れにあらがう永川の姿が重なって見えた。
待望された復帰登板ではなかった。自分の働き場所を掴む道のりだった。
リハビリでは、はやる心を抑えるのが大変だった。
走るために、昨年9月に左膝のクリーニング手術を決断した(37歳、「松坂世代」はまだ戦える。 広島・永川勝浩はなぜ諦めないか。http://number.bunshun.jp/articles/-/829839)。手術前にたばこをきっぱり止め、退院後は夕食時に炭水化物を摂らず体重管理を徹底した。
リハビリを開始しても、着実に段階を上げようとするトレーナーの指示よりも1歩、2歩先に進みたい気持ちを抑えることの方が大変だった。
トレーニングルームでのランニングマシンから始まったランニングは徐々に強度や距離が伸び、地面を蹴る力は強くなった。十分な走り込みが納得できる投球につながる。復帰登板で計測した147kmも走り込みの賜物だ。
「球速だけ出そうと思えばもっと出せると思う」とさらなる高みを描き、そして力に変えた。
長いリハビリを経て、4月22日のウエスタン・リーグ阪神戦で実戦復帰した。