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30歳になった斎藤佑樹。あの頃と
変わらない人間としての「強さ」。 

text by

高山通史

高山通史Michifumi Takayama

PROFILE

photograph byKyodo News

posted2018/06/08 11:00

30歳になった斎藤佑樹。あの頃と変わらない人間としての「強さ」。<Number Web> photograph by Kyodo News

昨シーズンは6試合で1勝3敗、防御率6.75。8年目を迎え30歳となった今シーズン、斎藤佑樹はここまで一軍で1試合に登板したのみだ。

投げやりではなく、怒気をはらんだ声。

 すれ違った時、こちらの業務を察してくれたのだろう。一言、声を掛けてきた。

「コメントしておきましょうか。その方がいいですね」

 断っておくが、トーンは決して投げやりではない。その後は穏やかに、冷静に言葉をつないでいった。ただ、シンプルに表現すれば怒気に満ちていた。

 その憤りのベクトルは窺いしれないが、パワーも充満していたのである。喜怒哀楽の中で「怒」と「哀」の感情をオープンにするケースはレアだが、その時には感じることができた。

 30歳となるシーズンの初登板。斎藤投手の秘めた覚悟、強い思いを、その一瞬で悟ることができた。必死に自分と、現実と向き合っていた。荒ぶっていた。うれしくもあり、なぜか安心した。隠そうとしない。隠そうとしても隠すことのできない執念を感じたからである。

いろいろな声が本人にも届く。

 追憶の12年前の夏、テレビ中継の画面越しに釘付けになった。私は当時、斎藤投手に接する前だった。田中投手へ果敢に立ち向かっていき、勝者となった。その記憶に残る姿が、少しフラッシュバックしたのである。

 闘い続けている。昨シーズンまで15勝23敗。肯定的、否定的も含めて、いろいろな声や意見は、広報の耳にも入る。SNSも隆盛の時代。否が応でも、斎藤投手にも届く。

 注目される立場であるがゆえに、結果の良し悪しに関わらずクローズアップされる。通常の選手であれば報道されないようなマイナス要素の敗戦等でもニュースになり、記事になる。それが宿命である。

 第三者から見れば、無情であり、辛らつな見解には非情だと感じることがある。ただ斎藤投手に接していると、私のような凡人の感性、感覚は通じないと再認識することがある。

【次ページ】 大谷翔平にファンが一斉に群がった日の記憶。

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