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ジダン「我々人間は感情の生き物」
最高の選手は最高の監督でもあった。 

text by

井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byGetty Images

posted2018/06/01 11:30

ジダン「我々人間は感情の生き物」最高の選手は最高の監督でもあった。<Number Web> photograph by Getty Images

「この人はフットボールをどれほど深く知っているのだろう」そんな疑問を持たせてくれるジダンのような存在は本当に稀有だ。

あのヘッドバットも説明がつく。

 ジダンの辞任の一報を受けて、副主将のひとり、マルセロはこうつぶやいた。

「ミステル・ジズー。あなたのそばで多くのことを学びました! すべてのトレーニング、すべてのアドバイスを子供のように楽しみました。あなたは私にとって、非常に特別な存在だ!

 あなたはその仕事ぶりと献身性、情熱、そして何より、その人間性によって歴史をつくりました! ありがとうございます、ミステル(泣き顔の絵文字)」

 おそらく、フットボール史上最高の選手のひとりが、最高の指導者にもなれた理由はそこにあるのだろう。

「エモーションを感じられるのは良いことだと思う。我々人間は感情の生き物だから、それは普通だし、美しいことだ」

 2006年W杯決勝でマルコ・マテラッツィに見舞ったヘッドバットも、これで説明がつくような気がする。洗練された立ち姿のなかに秘める、ときに狂気にもなる感情。その落差がまた、彼の魅力のひとつでもあると思う。

 幸いにも、指導者そのものへの興味はまだ失っていないという。レジェンドのなかのレジェンドが次にいかなるステップを踏むのか。現役時代と同様に、フットボールの世界で軽やかに、そして優雅に舞い続けてほしい。

 最後に僭越ながら、僕からも言っておきたい。ありがとう、ジズー。

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