“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
フロンターレ昇格を蹴って進学。
筑波大・三笘薫、人生の選択について。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/05/28 07:00
谷口彰悟や車屋紳太郎ら筑波大から川崎へ入団した選手は数多い。三笘薫もその流れに続く。
川崎の向島スカウトも成長を実感。
自分の選択は正しかった――。それを筑波大の3年間で表現した。
いきなり1年から出番を掴むと、関東大学リーグ1部で2位躍進とインカレ優勝に貢献した。昨年は2年生にしてユニバーシアード日本代表に選出されると、同大会で優勝。また関東リーグ1部優勝とベストイレブンも獲得した。
さらに天皇杯2回戦のベガルタ仙台戦だ。2人をぶち抜くドリブルと、抜群のボールコントロールでDF3人を無力化した60mドリブルシュート、そして決勝ゴールの2得点を叩き込み、一気に三笘薫の名は知れ渡った。
向島はスカウトとして、三笘を3年間ずっと熱心に追いかけ続けた。だからこそ彼の成長に目を細めている。
「フロンターレに戻って来たときの姿を想像しながら、ずっと彼のプレーを見ています。大学に行って、彼のスケールは間違いなく大きくなった。体つき、スピード感もそうだし、そのスピードの中での質が格段に上がりました。中でも仙台戦の彼の存在は本当に際立っていた。大学で人間的にも大きく成長したし、1年から継続して試合に使ってもらったことが大きかったなと感じますね」
50mループシュートを決めるスケール。
大学3年生となった今年も、驚異的なゴールを決めている。
5月3日、法政大戦でのことだ。三笘は相手GKのパントキックを右サイドのセンターライン付近で拾う。トラップした時点ではゴールに背を向けた状態だったが、「後ろにスペースがあることは分かっていた」と食いついてきたDFの動きを見極める。
浮き球でDFの頭上を抜きつつ、鋭いターンから一気に加速。「GKが前に出ていたのが分かった」瞬間、約50mの距離からループシュートを放った。「追い風だったので、風に乗るように軽く蹴る感じで狙いました」と語ったように、強風に乗ったボールはGKの頭上を越えて、ゴール左隅にノーバウンドで吸い込まれていった。
ゴール裏で写真を撮っていた筆者も思わず見とれるほど、一連の動きに無駄がなく、美しい放物線を描いた一撃だった。
ユース時代からよく取材しているが、三笘は1試合に1回は必ず驚くプレーをやってくれる。そのエンターテイメント性とスケールは、向島が言うように確実に進化している。