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トルシエが考える日本代表の問題点。
「西野にナショナリズムを託したのか?」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2018/05/20 11:30
日本代表新監督就任記者会見での田嶋幸三会長と西野朗監督。お祝いの雰囲気が少なく、西野氏の硬い表情が印象的な会見となった。
海外メディアが批判するのを承知の上で。
「海外のメディアが、ワールドカップ予選を突破した監督を本大会の2カ月前に更迭するのは合理的な判断とは言えないと批判するのを承知の上での決断だったわけだ。
これは極めてロジカルな批判なのだが、あくまでも外から見た批判に過ぎない。
内側に身を置く人間にとってのロジックは同じではない。
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このまま続けてもこれ以上の進歩は見込めないと判断したのは賢明だった。チームもポテンシャルを100%発揮できない。そう考えての決断であったのだろうし、そうであって欲しいと私は願っている。何故なら別の理由も考え得るからだ。恐らく間違っているとは思うが……」
西野氏にナショナリズムの要素を託したのでは?
――スポーツ面以外の理由、例えば政治・経済的な理由もあるということか?
「いや、そうではなくてナショナリズムの側面からのものだ。日本的なナショナリズムを前面に押し出して、日本人だけの手で日本の国旗を高く掲げる。そうしたナショナリズムの側面だ。
ナショナリズムを推進したい人間にとっては、西野朗新監督は最適な人材だ。日本の環境の中で育った指導者であるからだ。海外での経験があるわけでもなく、日本を象徴する存在であるといえる。国粋主義とまでは言わない。それは適切な言葉ではない。だがそれでもナショナリズムの側面を私は感じる。西野氏にナショナリズムの要素を託したのではないか、と。
西野氏とは以前から面識があり、何度も話をしているし、彼に関して書かれたものも読んでいる。岡田武史氏や田嶋会長、故・岡野俊一郎元会長が国際感覚を身につけてとてもオープンであるのに対し、川淵三郎氏はどちらかといえばナショナリストのような気がする。西野氏も川淵氏と同じ側に位置するように感じた。
それこそが私が感じたことで、だからこそそうしたナショナリズムがこの決定の理由であって欲しくないと強く願っている。決してそうであるとは思っていないが」