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サンウルブズを3カ月半追いかけて。
スーパーラグビー初勝利は必然だった。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2018/05/17 11:30
サンウルブズの記念すべき今季初勝利は、ホーム秩父宮での出来事だった。涙を流しているファンの姿も見られた。
明らかに右肩上がりで成長した3カ月間。
1月28日から5月12日、別府からこの日の秩父宮に至るまで、サンウルブズは明らかに右肩上がりで成長し続けていた。3カ月の期間が過ぎ、他チームが通常準備に費やす期間をサンウルブズもようやく消化できていた。
初戦からしばらくチームを固定することなく全ての選手を使い続けてきたHCのジェイミー・ジョセフは、次第にこのメンバーの中で一番勝てる可能性のあるメンバーを絞り始めているように見えた。
彼の周りを固めるスタッフはアタックコーチのトニー・ブラウンからチームマネージャーのTさんに至るまで、誰もが自分の仕事を毎日サボることなくやりきっていた。サンウルブズが苦しんでいたラインアウトは少しずつ改善されていっていた。姫野、徳永といった若手選手は順調に成長していた。
浅原の言葉を借りるなら、ペルシアの大王の喉元は少しずつではあるが見え始めていた。あとはそこをめがけて渾身の力を込めて槍を投じればよかった。そして、相手のレッズは調子に乗れていなかった。
試合当日、朝食前のミーティング。
毎試合、サンウルブズは当日の朝食前、短いミーティングを持つ。選手の数だけ椅子を並べ、その前にジェイミー・ジョセフ、あるいはアタック、ディフェンスのコーチが立って、簡単だけれど非常に考えられた短いコメントを述べる。レッズ戦の朝もそうだった。
まず選手たちの前に立ったジェイミーが、ラグビーとは、について簡単に自分の哲学を述べたあと、みんなもう一度どこからこの挑戦が始まったのか思い出してほしい、と言った。
その後、選手たちの前に天井から吊るされた白いスクリーンに、彼らが別府での合宿最終日に行った自衛隊での訓練風景が数分映し出された。20キロの荷物を背負っての山道の行軍訓練、太い丸太を数人で肩に背負って、いくつもの障害を乗り越えてゆく訓練。
その訓練の厳しさを、キャプテンの流が「これまでの練習で一番しんどかったですよ」と笑いながら語っていたのを思い出す。