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5月15日、25歳になるJリーグへ。
今こそ伝えておきたい誕生前史。
posted2018/05/11 11:00
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph by
J.LEAGUE
あの夜、国立にいた。
オープニングマッチの入場券は、往復ハガキによる抽選で、僕は家族や親戚の名前を借用して10枚くらい応募したのに全部外れた。何が何でもあの試合を生で見たいと思っていたから、すごく悲しかった。
それなのに、あの夜、国立にいることができたのは当時付き合っていたカノジョのおかげだ。働いていた雑貨屋で、出入りの宅急便のお兄さんからチケットを2枚もらってきてくれたのだ。試合の前日か、もしかしたら当日だったかもしれない。直前になってもたらされた幸運だった。
とにかく嬉しくて嬉しくて、千駄ヶ谷の改札を出て、国立に着いて、チケットを手にシートナンバーを探しながらスタンドの階段を登って……と思い出しながら綴っているだけで、25年も経つというのに顔がほころんでくる。
ようやく見つけた席は最上段の隅の隅だった。僕らの後ろにはもう席はなくて、振り向くと日本青年館があった。でも本当に嬉しかった。嬉しかっただけでなく、胸が熱くなって、恥ずかしい話、涙が溢れそうだった。
そしてマイヤーのとんでもないミドルシュートやディアスのゴールを目の前で見た。そのたびに僕は隣の彼女にバレないように目元を拭っていた。
1993年5月15日、Jが誕生した前の話。
なぜあんなに昂っていたのか――と思い出話から始めたのは、今年も「誕生日」が近づいてきたからだ。
1993年5月15日、Jリーグは生まれた。
実は毎年、この日がやってくるたびに、あの夜の興奮や高揚を思い出すことにしている。そして国立競技場の電光掲示板に映し出された「THE BIRTHDAY OF JLEAGUE」の文字を蘇らせながら、あれからの日々に思いを馳せることにしている。
今年は四半世紀の節目だから、少し角度を変えて、「あの夜まで」を振り返ってみたいと思う。いわばJリーグ誕生前史――。